岩井俊二監督「ヴァンパイア」を観て

 Huluで視聴。ちなみにHuluは、ちょうどこの「ヴァンパイア」を観たところで、これ以上観たいと思う作品が見当たらなくなったので、2週間の無料期間のみで契約を終了させた。


 2012年日本公開。岩井俊二監督作品ということで気になってはいたが、主演が外人ばかりということであまり魅力を感じず、当時映画館には行かなかったことを覚えている。


 で、感想としては、観ない方が良かったなと。というのも、タイトルは比喩でも暗喩でもなく、リアルに「血」を吸い取ることを主題としたシナリオだったので、正直気色悪かったのだ。だから役者が外人だとか、言葉が英語だとかまったく関係なく、生理的に受け付けなかった。ストーリーも映像美もあまり覚えていない。まあもちろん、血の演出が好きな人は楽しめると思うのだが。でも、たくさんの白い風船を身体に取り付けるシーンはさすがと思ったかな。岩井俊二らしいなと。その一方で、これまでに見られた岩井俊二らしいなという演出は少なかったようにも思えた。ある種実験的な作品なのかもしれない。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
血を抜かれた若い女性の遺体が相次いで発見され、“ヴァンパイア”と呼ばれる連続殺人犯が世間を騒がせる。犯人はアルツハイマーの母の面倒を見る善良な高校教師、サイモン・ウィリアムズ。被害者の女性は皆、自殺志願者であった。血に取り憑かれた男と犠牲者たちとの数奇な共犯関係の絆。彼らは人知れぬ場所で儚くも希有な愛を育んでゆく。孤高なる美意識と世界観で読者を魅了する岩井ワールド。エーテリアルな愛の物語。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
岩井俊二(イワイシュンジ)
1963年宮城県生まれ。95年「Love Letter」で映画監督としてのキャリアをスタート後、「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」など数々の作品を発表。近年は活動を日本国外にも広げ、10年、「ヴァンパイア」をカナダ・バンクーバーにて撮影。2011年にはオフィシャルHP『岩井俊二映画祭』をオープン。メディアの枠を超え、多彩に活躍するマルチクリエイターである(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

映画「桐島、部活やめるってよ」を観て

 数年前に小説で読んだのだが、いまいちだった記憶が残っている。とにかくさわやかで瑞々し過ぎて、感情移入できなかった。青春時代の青臭い物語を恥ずかしく感じたわけだ。でも、読みながらこれは映像化されたらおもしろそうだなというのは、なんとなく感じてもいた。なんとなく。で、映画チャンネルで放送されていたので視聴した。


◆朝井リョウ著『桐島、部活やめるってよ』を読んで


 あらすじは、とある高校にて、「桐島」君が部活を辞めると言い出したことによって起こる桐島君のまわりの人間の話。ネタバレになるのだが、この物語のおもしろいところは、タイトルに登場している「桐島」君が、本編には一切登場しないところだ。桐島君の親しい友人や彼女、そしてほとんど繋がりのないクラスメイトなどの話がオムニバス形式で展開されている。だから、「桐島」という主人公(?)は登場しないうえに、映画の中での視点(中心人物)もコロコロ変わるというヘソマガリな切り口が観処とも言えるし、混乱しないためのポイントとも言える。まあ、高校時代ってのは、非常に狭い世界の中で生きており、その中でも「部活」というのは、その人を語る上での重要なコミュニティであり、肩書きである。もし高校生が名刺を持つ文化があり、名刺交換をすることがあるなら、誰もが真っ先に相手の「部活」が何と書かれているかに目をやることだろう。だから、誰かが部活を辞めるというニュースは、非常に大きなトピックスになり、多かれ少なかれそこにドラマが生まれるわけで、そこを切り取って描いた、いくつかの物語を集合させたものである。ともかく、若さ故の心理描写がメインとなって、きれいにまとめられた物語は、文章より映像の方が僕はしっくりくる。


 映画は2012年公開で、いくつもの賞を受賞している。神木隆之介橋本愛東出昌大らが主演。橋本愛東出昌大はいくつかの新人賞を受賞。映画版はおすすめだと思う。


【解説】
日本国内映画賞レース最多獲得を独走!ネット上の映画ランキング上位独占の問題作!観た人それぞれの答えがある…。観客・マスコミ・評論家を問わず、“語りたくなる映画"ナンバー1/劇場で観た人の熱が生み出した、奇跡のロングランヒット作!
【ストーリー】
ありふれた時間が校舎に流れる「金曜日」の放課後。1つだけ昨日までと違ったのは、学校内の誰もが認める“スター"桐島の退部のニュースが校内を駆け巡ったこと。彼女さえも連絡がとれずその理由を知らされぬまま、退部に大きな影響を受けるバレーボール部の部員たちはもちろんのこと、桐島と同様に学校内ヒエラルキーの“上"に属する生徒たち、そして直接的には桐島と関係のない“下"に属する生徒まで、あらゆる部活、クラスの人間関係が静かに変化していく。校内の人間関係に緊張感が張りつめる中、桐島に一番遠い存在だった“下"に属する映画部前田が動きだし、物語は思わぬ方向へ展開していく。

又吉直樹著『火花』を読んで

 ご存知芥川賞受賞作品。iBooksにて購入し、読了した。賛否両論あるが、僕は想像以上に楽しめた。


 で、まあ僕も「純文学とは何か?」を語れるほど読書通ではないのだが、これほどストレートに「純文学」と言える作品はなかなかない、というか、あったとしても、久しぶりに出逢えた感じがする。とにかくストレートなのだ。もちろん、テレビでよく見る人というアドバンテージはあるのだろうけど、ここ数年の芥川賞作品の中では格段に読みやすかったし、奇をてらった切り口でもなければ、手垢のついたようなありふれた展開でもなかった。落選作を読んでないので、なんとも言えないが、これが芥川賞ですと言うのであれば妥当なのじゃないかと思う。ただ、誰かが指摘したように、じゃあ本屋大賞とどう違うのかと問われると、そこは僕にもよくわからない。でもまあとにかく、読みやすくて、楽しめたことには変わりない。


 とある売れないお笑い芸人が、その先輩芸人とつるんでいる日々を描いた物語。鳴かず飛ばずの芸人が持つ葛藤や、誰の日常でもあるどうでもいいことが丁寧に表現されている。僕自身、バンドを組んであーでもない、こーでもないと、足踏みしていた時期と重ね合わせることができたので、共感できる部分が多かった。その中で、画面キャプチャーを撮って、EVERNOTEに保存したのは、以下の一節。無駄なことに時間を費やしてきた人、大きな寄り道をしてきた人にとって、何度も読み返し、自分に言い聞かせたくなるパラグラフだと思う。

 必要がないことを長い時間かけてやり続けることは怖いだろう? 一度しかない人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう。無駄なことを排除するということは、危険を回避するとういうことだ。臆病でも、勘違いでも、救いようのない馬鹿でもいい、リスクだらけの舞台に立ち、常識を覆すことに全力で挑める者だけが漫才師になれるのだ。それがわかっただけでもよかった。この長い月日をかけた無謀な挑戦によって、僕は自分の人生を得たのだと思う。


 あと、今リンクをはって気づいたのだが、書籍を買うと税込み1,296円もするようだ。しかも、これだけ話題になったからだろうけど、在庫切れで入荷は8月だとか。iBooksでは1,000円だったし、データだから在庫切れなどもない。「本」として購入する意味がどんどん薄れていくなと思った次第だ。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。人間存在の根本を見つめた真摯な筆致が感動を呼ぶ!「文學界」を史上初の大増刷に導いた話題作。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
又吉直樹(マタヨシナオキ)
1980年大阪府寝屋川市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。コンビ「ピース」として活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

映画「イニシエーション・ラブ」を観て

 金沢に帰省していたとき映画館で視聴。上映の最後の日だった。


 で、この話は、去年の秋に小説で読んで、いたく感銘を受けたのだが、映画化されると聞いて、果たしてそんなことが可能なのかと、期待半分、余計な心配半分な気持ちになった。原作は、映像がないからこその「仕掛け」が肝になっている小説だからだ。また、主演が前田敦子と聞いて、いやいや違うだろと。完全にミス・キャストだろうと。まだAKB繋がりなら、大島なんちゃらとか篠田かんちゃらの方が原作のイメージに近いんじゃないかと文句を言いたくなったことを覚えている(というか、実際に言っていたのだが)。


◆乾くるみ著『イニシエーション・ラブ』を読んで


 で、映画である。まあ、開始1分で、「あ、なるほど、これは期待できる」と、「仕掛け」に関しては期待に応えてくれるような気がした。で、次なる不安材料、前田敦子なのだが、実は事前にいつくかのレビューに目を通しており、意外にも彼女の演技、存在は好評価だったのだ。それに引っ張られる部分もあったのか、映画が進むにつれ、自分も前田あっちゃんはアリに思えてきた。というか、映画化にあたって、あっちゃんの存在感に寄せた演出をしたのか、それが彼女の演技力の成せる技なのか定かではないが、すこぶる自然にその役をまっとうしていた。良い意味での裏切りだった。また、僕の場合は、小説を読んだあと解説サイトを探して、「どういう仕掛けがあったのか?」を細かく確認したのだが、映画化にあたって、そういったネタバレ解説も盛り込まれていたので、まだ小説を読んでいない人も充分楽しめる。もちろん小説を先に読んで、映画でおさらいするってのもアリだろう。まあ現代っぽい「ゆとり」な解説をしてもらえるわけである。


 ということで、小説、漫画の映画化は、高アベレージでがっかりするというジンクスを見事打ち破ってくれた作品と言って良い。まあどの映画館でももう上映はしてないだろうけど、いつか観るチャンスがあるなら、観ておいた方が良いと思う。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説ーと思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
乾くるみ(イヌイクルミ)
1963年、静岡県生まれ。静岡大学理学部数学科卒業。98年『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞して作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「ラッシュアワー」を観て

 1999年日本公開作品。僕が東京に上京して、生活にも慣れてきた頃、この映画の宣伝を頻繁に目にしたことを覚えている。ジャッキー・チェンとか懐かしいな、とか思いながら。そういうわけで興味はあったのだが、その当時もまだドラえもん以外の映画を映画館で観たことがなかったわけで、多分映画館でどうやったら映画を観ることができるかわからなかったので、行かなかった。で、今になって初視聴。


 で、僕はずっと勘違いしてたみたいで、ジャッキーの相棒になる黒人をエディ・マーフィーだと思っていたが、クリス・タッカーという俳優さんだったようだ。全然知らない人だったが、コミカルで良い意味で黒人っぽい大雑把さが心地よかった。また、ジャッキーの相方として、サモ・ハンでもユン・ピョウでもないという部分に新鮮味があったし、噛み合ってなさそうで噛み合っているという掛け合いが観処かと。ので、ジャッキー好きであれば、観ておきたい。ポリス・ストーリーやプロジェクトAでは観られなかった、アメリカ版ジャッキーを観ることができる。


 内容は、アメリカにて誘拐された中国総領事の娘を助け出すといったストーリー。中国(香港)から派遣されたジャッキーと地元の市警のクリス・タッカーが、まあ自由奔放に犯人を追いかけるといったもの。ユーモアもあるし、アクションもまだまだ健在で、物語もしっかりしている。ただ、残念なのが続編もあるようだが、Huluには登録されていないようだ(でもGoogleで検索するとリンクが出てくる)。ゴールデン洋画劇場などで放送される日を待つことにしよう。


【ストーリー】
片やしゃべりっぱなし…片や暴れっぱなし! ジャッキー・チェン(『レッド・ブロンクス』『ファイナル・プロジェクト』)とクリス・タッカー(『ランナウェイ』『friday』)競演、パンチとギャグが飛び交う、痛快アクション・コメディー。文化摩擦あり、感情の爆発あり。言葉も習慣も違う世界からやってきた2人の刑事。互いの共通点は、コイツと組むのはまっぴら御免ということだけ。犯人逮捕のために残された時間はわずか。ひとまずここは取っ組み合いを止めて、2人の力を合わせるしかない!
【解説】
東洋一、手が速い男。ミーツ 西洋一、口が減らない男。“本年度ベストのアクション・コメディー!"“この映画、タダモノじゃない!"