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乾くるみ著『イニシエーション・ラブ』を読んで

 久しぶりに本を読んだ。一気に。長くはない物語なので1日で読むことができる。かなりおもしろかった。


 まず、この本を読むに至った経緯としては、朝礼時に部下から「おすすめの本」として紹介されたから。普段、彼は小説を読まないそうだが、テレビの「しゃべくり007」にて、くりぃむしちゅーの有田が紹介していた(2014年3月のことらしい)ことで、試しに読んでみたらとてもおもしろかったとのこと。で、それを聞いて僕も読んでみることにした。テレビの影響っていまだ大きいようで、10年前に発表された本なのだが、この放送のあと爆発的に売れたそうだ。


 で、このイニシエーション・ラブのおもしろさというのは、いわゆる叙述トリック」と言われる仕掛けにある。読者に「こういう話だろう」という先入観を持たせ、最後に「実は違います。騙されましたね」というオチを用意しているってやつだ。思い込みを逆手に取るわけである。ということで何を書いてもネタバレになるので、これといったことは書けない。ただ、余談して、この手の「最後の1ページで大どんでん返し」という作品として僕が思い出すのは、『殺戮にいたる病』。この小説も、7年くらい前だが、知人から「ラジオでナイナイの岡村が絶賛してておもしかった」と紹介されて読んでみた。僕的には、非常にエキサイトしたのだが、他の友人に薦めたところ「どうして、こんなしょうもないものを薦めてきたんだ!」と憤慨される始末。ネット上でも評価は二分しており、どうも好き嫌いがきれいに別れる傾向があるようだ。また『向日葵の咲かない夏』も、facebookかなにかでフレンドから紹介され、感銘した印象が強く残っている。こちらは、安定した評価がされている模様。あとは『イニシエーション・ラブ』の中でも、チラっと登場した『十角館の殺人』も似たような作風なのかな。いつか読もうと思いながらも未読の、よく聞く名作。


 ともかく、最後にどんでん返しが用意されているとわかって読んでも、それを予想することはできなかった。おすすめです。


 また、2015年には映画化されるようだけど、この手のトリック作品を映像化するなんて、どういった切り口でくるのか楽しみではあるかな。まあ絶対に映画を観たらがっかりすると思うのだが。


【以下プチ・ネタバレ注意】


 差し障りの無い程度のネタバレを1つ。作者「乾くるみ」という名前からして、女性だと思っていたけど、調べてみると男性だった。まあ、ここでも間違った先入観を持たせるために、あえてこんなペンネームを選んだんだと思う。事実、女性作家と思って読んでいると、途中に出てくる性描写が妙に男性目線だなという印象があり、女性がこんな風にセックスを描くのかぁ、と関心したのだが、作者が男だというなら納得。あと、やっぱり女性が描いたのなら、もっと恋愛色が強くなってただろうな。繊細な心理描写がもっと増えていたはず(個人的には、そういうくどい恋愛心理描写は苦手)。でも、男であれ女であれ、理系の人間の小説だなというのは、プロットや挿話以外からも感じとることができた。計算してつくってるなと。


 最後にもうひとつ。僕が一番最初に感じた違和感は、2004年に発表された作品なのに、舞台は1980年代となっている点。作者自身の学生時代と主人公の年代を重ねたためなのだろうが、この時代設定ありきの物語だなと思ってしまった。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説ーと思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
乾くるみ(イヌイクルミ)
1963年、静岡県生まれ。静岡大学理学部数学科卒業。98年『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞して作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)