君にとってオールA、オール5は魅力的か?

 小学校の頃ベストプレープロ野球というファミコンの野球ソフトがあって、よくそれで遊んでいました。このゲームは、「ファミスタ」や「燃えプロ」のように、選手を操作して打ったり走ったり投げたりすることはなく、バントのサインを出すとか、前進守備の指示を出すとか監督として参加するゲームです。もちろんバントのサインを出しても失敗することもあるし、ぼーっと何もしないで眺めているだけで勝つことだってあります。そういったちょっと玄人チックな野球ゲームでした。


 で、その「ベストプレープロ野球」のもうひとつの大きな特徴として、選手の能力を勝手に決められる、変更できるという仕組みがありました。当時としてはプレーヤー能力を自由にエディットできるというのは珍しいことで、僕は完全にオリジナルで、全6球団架空のチームをつくって遊んでいました。休み時間に描いていた漫画のキャラクターを集めたチームです。自前の漫画キャラの能力なんていかようにでもできるのですが、僕は個々のキャラに自然とあからさまな能力差を設けていました。たとえば、足の速さを「A」としたらパワーは「E」と極端に弱くするとか、逆に長距離ヒッターは守備や走力を「D」とか「E」に落とすとか、キャッチャーとしての能力は高いが肩が弱いとか。そういった感じで、長所短所を持たせて選手をつくり、チームを形成していていたのです。僕としては、ごく自然に当たり前のように、このような選手能力差を設定してたのですが、友人たちにチームをつくらせると、能力「オールA」の選手ばかりにします。1番バッターから9番バッターまですべての能力がA。せいぜい悪くてもBかCという配分。僕は、たとえゲームとはいえ、こんなスーパー・プレイヤー達で試合をすることを望んではいませんでした。気持ちはわからなくもないが、つまらないだろ、こんなの、と。同じく、パワプロサクセスモードでは、「オールA選手のつくり方」というような記事をファミ通などで見かけますが、まったく「オールA選手」には興味が湧きません。パワプロでもウイイレでも、選手をつくるときは、明確な長短所を設け、チーム全体で補い合うようなチームをエディットするようにしています。


 で、ドラクエの話。


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 ゲームをはじめた当初は僧侶や戦士や魔法使いといった職業によって、できることできないことが明確に分かれていました。呪文が使えりゃ力が弱い、攻撃力があれば機敏さがない、など。ところがゲームをどんどん進めるにあたって、各自がそれ相応にすべての職業のレベルを上げていき、誰でもそれなりの高い能力を持ち、特技をこなせるようになっきます。例えば、当初は、モンスターから「呪い」をかけられたとき、僧侶キャラが「おはらい」をすることで呪いを解く必要がありました。ので、パーティの誰かに「呪い」がかかると、僧侶である僕は、よし俺の出番だと思うわけですが、今では「おはらい」など、誰でもできるようになっており、イカツイ戦士が、攻撃の手を止めて「おはらい」をすることだってあります。些細なことかもしれませんが、僕はそこに違和感を感じました。誰でもいいのか、と。そして、発売して4ヶ月も経つと、すでに現時点で最強レベルにまで達しているキャラがごろごろいます。そういったプレイヤー達は、一様になんだってできます。それを見ていると、とにかく時間をかけてやり込めばやり込むほど個性が消えていくような気もして、僕はじゃあ何をゴールとしてこの先ドラクエで遊べばいいのかなという疑問が正直湧いてきました。オールAに近づけば近づくほど、魅力を感じなくなってきたというわけです。


 この話を友人にしたところ、先のベストプレーの話が出てきました。「そういえばお前はベストプレーのときから、オールAを嫌っていたな。小学生のくせに」と。


 という文章を書いていたら、きのう20日にドラクエの運営側から、やり込んで、どんどん強くなることは、ドラクエのひとつの目指すところ、といったようなコメントがありました。ただ、今後は、職業毎にそれなりの差は設けるようにしたい、という補足もありましたが。


 結局のところ「オールA」を目指すこと、完璧を目指すこと、最強を目指すことというのは、ゲームをやる人間、ゲームの世界にとっては、理想とする最終型であり、価値のあることなんだろうなと思いました。没個性になることなんかよりも、よっぽど優先順位は高いのでしょう。まあ、現実でできないことを実現するのがゲームの役目だと考えれば当然なのかもしれませんが、僕は、どうしても「欠陥」があるキャラクターの方に愛着を持ってしましまいます。このへんが、僕の詰めの甘さ、徹底するこだわりのなさなのかもしれませんが。


◆開発・運営だより -第3号- (2012/11/20)|目覚めし冒険者の広場


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