「12人の優しい日本人」を観て

 Huluにて視聴。三谷幸喜脚本で、1991年公開。また脚本のクレジットに「東京サンシャインボーイズ」とあるように、元々は舞台劇だったようで、個人的に好きな舞台脚本ものである。


 で、僕がこの映画の存在を知ったのが、2009年裁判員制度が施行される前後のことで、ちょくちょく、「12人の優しい日本人」という映画が引き合いに出されることがあった。もちろん、日本の裁判員制度と、映画で登場する陪審員制度はまったく別物ではあるが、こういったようなやり取りが行われるよというような意味合いだったと思う。ので、いつか観たいなと強く思っていた作品のひとつである。


 あらすじとしては、ある事件に対して陪審員12人が有罪無罪を話し合うという内容なのだが、三谷らしい皮肉も込めて、身に覚えのある日本人らしさが凝縮されたキャラが活き活きと議論するというシナリオ(ちなみに、僕が自分に一番近いキャラは陪審員1号だと思った)。だから、約25年も前の作品だが、衣装やメイク以外に、まったく古臭さを感じない。


 まず話し合うことを好む人間と、面倒臭がる、苦手とする人間がいる。しかし、話し合ったところで、結論を出すジャッジを誰もしない。決定打は他人任せ。というより、ジャッジをすることより、話し合うことが好きなのだ。結論を出して話が終わってしまうことを暗に避けているともいえる。また、自分の意見を断固として変えない人間がおり、一方でそれに流されコロコロと意見を変える人間がいるために、議論も堂々巡りをする。そして意見を変えない人間にも2種類あり、確固とした理屈、ロジックを持っている人間と、まったくの個人的なフィーリングを固持する人間。だから、いくら話し合ったところで、意見など噛み合うわけもないのだ。ロジックとフィーリング。あげく、誰しもが話せば話すほど、興奮してきて自分の意見にしがみつくようになる。というより、みんなで話し合うことで結論を出そうとするのではなく、個人が持つ結論ありきで意見を言い続けるから、絶対に歩み寄れないのだ。とまあ、「日本人らしい」脚本が書かれ、「日本人らしい」演出がされている話なのだが、観ながら「これって日本人に限ったことじゃないんじゃないか?」とも思ってきた。人間って生物が12人も集まったら、どうやってもこういった話し合いになるよな、と。ましてや同じ会社の店長会議といったような、それ相応のカテゴライズがされた場でもない。まったくの無作為で集められた老若男女である。どの国の人間だって、まじめなコメディとして成り立つだろうと思えてきたのだ。人間ってめんどくさいなと。


 で、ポイントというのは、議論における、いろんな問題点、あるあるネタが出てくるのだが、その普遍的、絶対的な対処法というのが明示されていないということ。こういうのってよくあるよね、あはは、おもしろかった、で終わっているわけである。結局、この映画から、何か教訓を得るとしたら、話し合いをまとめる術なんてなくて、噛み合わないことは百も承知の上で、それでも話し合いながら、解決策を探していくしかないということだと解釈している。


【ストーリー】
陪審員全員が「無罪!!」しかしその部屋からは誰も出られなかったー/ある殺人事件の審議のために12人の陪審員が集められた。被告が若くて美人であることから、陪審員全員が無罪の決を出し、審議は早々に終了するかに見えた。しかし、陪審員2号が無罪の根拠を一人一人に問いただし始めたところから、審議の様相が混迷を呈していく。彼らは果たして「真実」に辿り着けるのだろうか…。

「花とアリス」「四月物語」を観て

 Huluにて視聴。岩井俊二作品。


 まず「花とアリス」から。2004年公開で、順番的には「リリイ・シュシュのすべて」の次に発表された作品。当時、僕は劇場で観たのだが、事前公開されたウェブ版に関しては、1話くらいを観て、あとは観逃したと記憶している。あらすじとしては、女子高生2人と男1人の恋物語とでもいえばいいだろうか。


 まあ、当時は岩井俊二熱がピークだったこともあって、大絶賛だったのだが、改めて観てみると、寄り道や挿話が多い点と、BGMに関してレパートリーが少ないのが残念に思えた。良い曲なのだが、しょっちゅう流れてくると若干しらけてしまう。そして今回、2人のヒロインである鈴木杏蒼井優バランスが取れていないことが一番気になってしまった。2人のキャラ設定は申し分ないのだが、女優としての存在感に残念ながら差を感じたのだ。ちょうどこの頃から太りはじめた鈴木杏と、そこに居るだけで半端ないオーラ全開である蒼井優。だから心に響くセリフも、たいていは蒼井優が放っているもので、特に蒼井優平泉成のやり取りは何度観ても刹那なさが止まらないシーンである。電車に乗って別れるシーンの何気ないやり取り、カメラ・ワークが、個人的な一番の観どころ。ウォー・アイー・ニー。


 次、「四月物語」。この作品は、昔、契約していたケーブルTVのチャンネルで、24時間ずっと岩井俊二の番組を放送するというような日があり、それが1日おきに3回くらい続いたことがあった。さすがに24時間も映画を観続けることはできないので、寝る時間を少しずつずらしたり、ビデオに録画したりして、そのとき放送していた全部の作品を観たなかで知った作品。公開は1998年。僕が観たのは2002年とかだろうか。1時間程度の短編で、主演は松たか子松たか子みたいなメジャーな女優を使うなんて、岩井俊二らしくないなと思いつつも、予想外に印象に残る物語だったので覚えている。あとなんといっても、シンプルながら古典的かつ普遍的なイメージのあるタイトルが秀逸。


 北海道の田舎町から大学進学のために上京した女子大生を描いた作品。はっきり言って、ストーリー的には、さほど感銘を受けることもないのだが、映像の巧さがこの上ない。冒頭の桜舞う中の引越シーンなんかは、期待とか不安とか複雑な心理描写も含め、「上京」を絵に書いたような完璧な映像だと思う。もちろん自分の上京や大学の入学式と重ね合わせて観ていたのだが、まさに、このまんまという感想を持った。


 ただ、僕のなかで大きく思い違いをしていたことがあって、この話のラストは、くりぃむしちゅー上田晋也が出てくるものだとばかり思っていたが、それは「夏至物語」の方だった。そして、肩透かしをくらったためか、「夏至物語」も観てみたくなったのだが、Huluでは視聴できないようである。女性主人公1人のモノローグ調な話だったと思うのだが、今一番観たい作品かもしれない。

キョンシー映画「霊幻道士」を観て

 Huluにて視聴。いわゆるキョンシー映画で、日本では1986年公開。


 で、僕は大きな勘違いをしてたことが判明。まず、僕が小学校の頃にブームにもなった「キョンシー」というのは、台湾の映画だと思っていた。というか、当時は中国かどこかというだけの認識で、大人になってから調べてみると、台湾だったという記憶が残っている。しかし、今回この「霊幻道士」を再生して、まず大きく違和感を覚えたことが、登場人物が広東語で喋っていること。で、調べてみると次のことがわかった。意外にもショッキングな出来事だった。


 大雑把にいって、キョンシー・シリーズには2種類あった。本家といえるのが、この「霊幻道士」で、香港映画。「キョンシー」という言葉自体が広東語らしい。監督、演出は、なんとあのサモ・ハン・キンポー。で、僕の頭のなかでごっちゃになっていたのが、この本家とはまったく別の、テンテンやスイカ頭といったちびっ子グループが登場するキョンシー・シリーズ。こちらこそが台湾映画で、タイトルは「幽幻道士」というらしい。「霊」と「幽」の違いで、キョンシーが登場するという点以外にストーリーに関係性は一切ない。日本での公開は本家より1年遅れた1987年。その後、このテンテンたちを中心とする「幽幻道士」をモチーフにした「来来!キョンシーズ」が1988年から日本でテレビ放送されるので、キョンシーといえばテンテンという印象が強く残っているのかもしれない。ともあれ、キョンシーには2種類の映画があり、それぞれ製作された国が違った上に、香港→台湾→日本と、二番煎じ、三番煎じが生まれていたことなど、今はじめて知ったわけである。


 とまあ誕生から30年目近くを経て、日本でブームになったキョンシー全体の事実を知ったのだが、思えば、どうしてテンテンが出てきたり、出てこなかったりするんだろうという疑問も当時も持っていたなぁということを思い出しながら視聴。そんな「霊幻道士」は、テンテンは登場せず、女幽霊が色仕掛けをするといったエピソードもある大人なキョンシー。というか、キョンシー自体、話の中心には据えていないこともあってか、おそらく当時は「ハズレのキョンシー」といった位置づけだったのだろう。たいして内容も覚えていなかった。はっきり覚えていたことといえば、序盤で、コーヒーの飲み方を知らなかったり、エッグタルトに砂糖をかけて食べるシーンくらいだろうか。食事のときに食べ方を知らないって恥ずかしいことなんだなという教訓とともに。しかしサモ・ハン・キンポー演出ということもあってか、アクション・シーンは、文句なしの観応えがあった。


 古い映画を観ると、当時間違って把握していたことの発見はもちろんだけど、それに伴って、なんか諸々の奥行きが出るのが楽しいことに思えてきた。

「少林サッカー」を観て

 日本では2002年6月に公開された作品。ちょうど日韓ワールドカップの時期にだったためか、話題になったのは覚えている。良い意味でアホらしい映画という評判だった。ちなみに、この作品は香港人の部下から、香港での有名な俳優として、周星馳チャウ・シンチーという名前を教えてもらい、代表作として「少林サッカー」がありますと紹介されたので観てみた。というか、そう紹介されるまで、少林サッカー」という映画は、中国の映画だと勝手に思っていた。少林寺拳法って中国っぽいイメージだったから。で、じゃあ少林寺拳法って香港発祥なのかなと思って調べてみると、どっこい日本なのだとか。思い込みで何でも決めつけてはいけないということだ。


 で、Huluにて、今回はじめて観たのだが、噂の通り、非常にアホらしい。これくらい型破りなシナリオや演出は日本人じゃできないなと思った。ナンセンスの色合いが馴染みのないものなのだ。でも、確実に笑うことができるという普遍的なツボは突いているのが、この作品の人気の秘密だろう。ただ、先日も書いたばかりなのだが、CGを駆使している部分において、がっつりのめり込むことができなかったというのも正直な感想。もちろん、この映画に関しては、リアルで撮影することに何の意味もなく、「んな、アホな!」という演出に特化しているのは良いのだが、ジャッキー映画の直後に観たのが悪かったのか、終始若干引き気味になってしまったことは否めない。「ここまでCG使えば、おもしろくもなるだろうよ」という自分が常に頭のなかにいたわけだ。


 とはいえ周星馳は、せっかく覚えた俳優・映画監督さんなので、今後も注目しておこうとは思う(そんな周星馳は現在53歳。少林サッカー日本公開当時も40歳だそうだ)。ちなみに、日本では笑いのネタとしてしか取り上げられなかった、実写版ドラゴンボールDRAGONBALL EVOLUTION」のクレジットに、プロデューサーとして周星馳の名前がある。実際は名義だけで、ほとんどノータッチだったらしいのだが、それでも「DRAGONBALL EVOLUTION」も観てみたくなってくる。Huluで視聴できないみたいだけど。


【解説】
世界初! 超弩級サッカーエンターテイメント、ニッポン上陸!


Hulu(フールー)を視聴してみた

 Hulu(フールー)という映画視聴サービスに申し込んでみた。とりあえず2週間は無料とのことなので、まずはお試し。まあどんなサービスもそうなのだが、最初無料でも、クレジットカードの登録は必須で、気づかずに無料期間が過ぎると自動的、強制的、無慈悲的に規定の料金が引き落とされるという仕組みだ。ちなみに、正規の金額は、月額1007円(税込)とのこと。まあ今のところ、課金してまで映画を観続けるほど映画好きでもないので、2週間だけの利用にするつもりではあるが。


 利用方法はいたって簡単で、YouTubeで動画検索するように、映画やドラマを探して、再生するだけ。しかし視聴しようとしたら、砂嵐の画面とともに日本からじゃないとダメというアラートが出たので、海外からの場合は、VPN接続が必要なケースもあるのかもしれない。そして、読み込みに時間がかかるわけでもなく、画面が止まったり固まったりすることも少ない。当然、広告もないのでYouTubeよりもストレスなく、スムーズに視聴ができる。画質も上々。かなり優良と言っていい気がする。


 ちなみに、「hulu」に関しては、ネット上で、よくよく目にしたサービスだが、緑色のサムネやアイコンが、なんとなく「Hao123」を連想させることから、胡散臭い印象があった。でも、上記の通り、なかなか優れたサービスだと思う。わざわざDVDをレンタルしに行ったり、返しに行く手間や、新しく購入する金額を考えれば、かなり便利だろう。まあ自分の好みのタイトルがどれだけ揃っているかは個人差があるかもだけど。ちなみに岩井俊二の「リリイ・シュシュのすべて」や「花とアリス」はもちろん「四月物語」もあった。さすがに映画「寄生獣」はまだなかったな(アニメはあった)。新作はどれくらいのペースで閲覧できるようになるのだろうか。それによっては本契約してもいいかもしれない。


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