2つのヤンキース

 草野球の話のつづき。


 メンバー募集をしているチームをネットで検索して、最終的には2つのチームにメールを出した。どうしてこの2つに絞ったのかはよく覚えていないが、いくつかある中で、2チームにアクションをかけたわけだ。否、もしくは手当たり次第にメールをして、返事がきたのがこの2チームだったのかもしれない。正直よく覚えていない。しかし、どういうわけか、その2チームは、チーム名が非常に似ていたことは覚えている。ヤンキース「西東京ヤンキース


 予定を調整して最初に練習に参加したのは「ヤンキース」の方だった。上井草にある4面で野球ができる、とても大きくきれいなグランドがあり、そこに出かけた。


f:id:junichi13:20080927104929j:plain


 ヤンキースの集団はすぐにわかった。「ニューヨーク・ヤンキース」のそのままコピー、ピンストライプのユニフォームだったからだ。ただし、ベイブ・ルースなどが活躍した時期のオールド・タイプで、ズボンがだいぶダボっとしたシェイプ。しかし当然僕はそんなユニフォームなどないので、リーボックのジャージ姿で加わることになる。


 その日偶然僕以外にも入団希望者がおり、「今日は体験参加で新しい人が2人います」みたいな形で簡単に紹介された。で、改めてこの「ヤンキース」のメンバーを見てみると、それこそヤンキーの集まりのようなチームなのだ。つまりガラが悪い。魁!!男塾に出てきそうなキャラの人もちらほら見受けられる。声をかければそれなりに愛想良く返答はしてもらえるけど、ちょっと恐そうな人たちだなと感じざるを得なかった。


 新人2人はベンチ・スタートで、僕はもう1人の新しい人と一緒に応援する。聞くと、彼は高校球児で、卒業後野球はしてなかったが、やはり春という季節柄か野球がしたくなってこのチームに参加したのだそうだ。で、もう正式に入団することは決めているのだとか。「アナタは入るんですか?」と訊かれ、「もう1チーム検討しているので、考え中ですかね」と僕は答える。「一緒にやりましょうよ」と誘われるも、やっぱりこのチームのメンツは恐そうだしな、この人は恐いと思わないのかなと思いながらベンチの隅で会話していた。


 その後、試合の中盤くらいで、彼が呼ばれ、代打で出場。たしか内野フライだった。ベンチの僕の横に戻ってきて、「しまったぁ~。硬球だったらスピンが掛かってもっと飛んでいたんだろうけど、軟球だからポップ・フライになったぁ~。軟球だってこと忘れてぁ」と、言い訳のようなことを言いながらも、久しぶりの打席を非常に満喫したような表情で語っていた。僕は「ドンマイっす」と2回くらい言ってあげた。


 はっきり覚えていないが16時プレイボールの試合だっただろうか。たいてい草野球は2時間枠でグランドを借りるのだが、4月では18時にも近くなると、もうあたりは暗くなりはじめている。照明は別途料金がかかるので、当然つけない。ので、草野球というものは、7回というイニングの制限以外にも2時間という枠の制限、そして日没による明るさの制限の中での戦いでもある。そしてゲームを続行するか否かを決めるのは、すべて審判の判断に委ねられているのだ。そして、この試合、時間と日没の都合上、「これが最終回」と告げられたイニングにて、「そういえば、もう1人いたな」くらいの温度感で僕が呼ばれ、ライトの守備につくことになった。まあライトなんかにボールは飛んでこないだろうと思っていたが、1アウト後に大きなフライが上がり、一歩も動くことなくキャッチ。代わった選手のところにボールが飛ぶというやつだ。僕のプレイは結局その捕球だけだったのだが、1つのアウトに関わることができただけでとても満足できたことを覚えている。試合終了後、例の彼が「ナイス・キャッチです!」と真っ先に僕のところに来てくれたのが嬉しかった。まわりは恐そうな人ばっかりだけど、この人と一緒に入団するなら、それもそれでアリかなと思った。


 そして、帰り際にチームの人に「じゃあ次回はどうしますか?」と訊かれ、僕はもう1チーム検討しているので、またこちらから連絡しますと、はっきりしない返答をした。一方で、もう1人の彼とは、「入団するってことなのでユニフォームつくりますね」と具体的な話を進めていた。そして「背番号希望とか有りますか?」という質問に対し、彼は「じゃ、13で」と答えた。僕も背番号の候補のひとつに13番を挙げていたので「ああ、とられたなぁ」という思いのままグランドを後にしたことを覚えている。たいしたことはしてないけど楽しかった。同期入団の良い奴もいそうだ。でも背番号とられちゃったなと。


 これが1つ目の「ヤンキース」での出来事。しかし、このチームにはその後関わっていない。思い出が残っているだけだ。