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『草野球をとことん楽しむ』を読んで

 図書館でたまたま見つけて、なんとなく借りてみた本。しかし家に帰って、レビューサイトの「読書メーター」を見てみると、あまり既読者がいないようで、僕がこれまでに手に取った中でもかなりマイナー部類の新書のようであった。ので、期待値は低めで読みはじめてみた。


 ところがどっこいだ。


 非常におもしろい内容で、共感する部分が当初より予想外に飛び出してきた。バレンティンの本塁打くらい。なにより、読みやすく、飽きのこない文章であることもあって、大満足できた。


 自分も何年か「草野球」をやってきたわけだが、「草野球界」ってほんとに特殊な世界だと思う。まず母体となっている「野球」というスポーツが、日本最大のエンターテイメントで、誰しも「やってみたい」と憧れを持つ娯楽。そんな野球を実際にプレイできるわけなので、こんなありがたいことはないのだが、趣味として続けるには、とてもやっかいなことが多い。チームを組めば、部活を経験している者もいたり、バッティングセンターだけの「経験者」もいたりとチーム内の実力もかなりの差があって当然。そして実力はともあれ、知識や理論に関しては、相当に高いレベルでひしめきあうほどなので、勝つことを優先するのか、楽しむことを優先するのかと、居酒屋さんにおけるチーム内の場外乱闘もめずらしくない。


 試合をするには最低限9人以上のチームメイトが必要で、かつ同等数の選手を持つ対戦相手も必要。プラス審判(草野球の場合はたいてい1人だが)にもアポを入れておく必要があり、1試合2時間のために、相当数の人間のスタンバイが必須なのだ。で、その試合をするにも、グランドを借りるために市や区への施設予約が必要で、最終的には抽選を待つことになる。すべては運だ。そして当然使用料もかかる。グローブとユニフォームは最低限自前で購入しなくてはならなく(僕も家にグローブが4つある)、それに加えバット、ボール、そしてキャッチャーのプロテクターなど、チーム運営のための備品費も必要。そして、ここまで用意し準備し予定も調整したのに、当日雨が降ると「今日は中止です」という1行のメール連絡ですべてが流れてしまうわけだ。当日の悪天候ならまだしも、前日の豪雨でまだグランドが乾いていないとか、霜が降りてぬかるんで危険などという理由で中止になることもざらである。いい大人が、こんなことのために一喜一憂をしナニをやっているのだと、客観的にみれば誰しもそう思うわけである。でも、だからこそ楽しいし、こうやって一冊の本になると読み応えがあるわけだ。きっと、誰かのやっている野球(プロ野球や高校野球)を観て、誰が打った誰が投げたという話ではなく、自分がやっているという部分が最大の魅力なのだろう。


 ちょっとでも「草野球」をかじったことのある人はぜひ読んでもらいたい。巧妙な隠し球のような一冊である。おすすめ。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
草野球こそ最高の娯楽だ。中年男をこれほど熱くするものが他にあるだろうか。試合前夜は嬉しくて寝付けないし、オーダーを考えてはしばしば徹夜。運動不足もなんのその、グラウンドでは思わずハッスルし、プレーを肴に打ち上げは大盛り上がり。果ては試合後に新聞まで作ってしまう…。二つのチームでプレーする著者が語る「草野球の楽しみ」と、愛すべき「草野球バカ」たちの姿。

【目次】(「BOOK」データベースより)
1回 遠足前の小学生?/2回 チーム愛/3回 エースの条件/4回 ダッグアウト/5回 ルールとエチケット/6回 ジャーニーマン/7回 草野球に引退なし

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
降籏学(フリハタマナブ)
1964(昭和39)年新潟県生まれ。神奈川大学法学部卒。英国アストン大学に留学。96年、第三回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)