第36回金沢百万石ロードレース

 3月のレースで、ひとつの大きな目標であった10キロ50分切りというのを達成したので、ハーフ・マラソンに初エントリー。ということで、春から意気込んでいたハーフ初チャレンジだが、周知の通り、夏のドラクエ発売により、走る時間がざっくり削られ、9月の月間走行距離はこともあろうに前月の1/3程度に。10月に入っても、さほど走り込めてないので、逆に割り切ってマイペースで走ろうと決めた。そもそも、この百万石ロードレースというのは、関門が厳しく、ハーフの部に関しては、19キロ地点1時間50分とかなりハードルも高い。まあそれもこれも、難しく考えずに、単純に走ることだけで充分だろうくらいの気分で参加することにした。


 と、ここまではレース前日に書いた話。


 ということで、前日は最近ではめずらしく11時ごろに就寝し、当日5時半起床。別段気分も悪くないし、体調も悪くないし、寝不足がどうこうという不快感もない。一夜漬けの試験勉強みたいな対応だが、この時点では「悪くない」というのが率直な感想。


 この日は、朝は少し肌寒いくらいで、陽が照っても心地よい具合の天候。模範的なアルデンテのように、走るには絶好のコンディションだったと思われる。会場に到着して、申し込みも済ませるまでは、別段問題もなかったのが、トイレにでも行こうかなと思い、トイレの方に行ってみると例によって長蛇の列。見るだけで滅入ってしまうような行列である。しかも美味しいものを食べるためでも、プレミア付きのチケットを買うためでもなく、トイレをするための順番待ちと考えるとさらに嫌気が加速する。とはいえ文句を言ってもしょうがないので、メインの会場のトイレは敬遠し、少し離れた小さな公園のトイレに行くことにした。すると一転2~3人しか人がおらずラッキーと思ったのだが、前にいた人がトイレに入るやいなや出てきて、一言「紙がねーよ」。ということで、改めてメイン会場に引き返し、さっきよりも長くなった行列に並ぶことに。そして、並びながら、このトイレ待ちの時間が厭だという理由だけで充分に走ることをやめられるな、などとストレスを抱えながら順番を待っていたわけである。


 そしてスタートまで40分ほどあった時間もあっという間になくなり、あと5分少々でハーフの号砲が鳴るという時間まできてしまった。時間なんてものは水洗便所の水のごとく流れていってしまう。そこで前にいた2~3人が離脱。トイレを諦めて、スタート地点に向かったのだろう。でも僕は、良くも悪くもこのレースに1分1秒をかける意気込みはなかったので、そのまま列に並ぶことにした。結局、手元の時計で8時ジャストくらいで僕の番に順番が来て、急いで用を足すことになったわけである。(最終的に走っているとき以上に、このとき時間を気にしていたかも)


 そして、外に飛び出してみると、案の定もうハーフのランナーはスタートを切っていた。まわりには、あ~やれやれ、みたいな一区切りついた安堵の空気が充満してるなか、僕1人でこそこそとスタート地点に向かい、スタッフのおじちゃんから、「おいおい、君もハーフなのか? 急いで急いで」とか言われながら、誰もいないところを1人でてってけ走りはじめることで僕の初ハーフ・マラソンが細々とスタート。


 そして、このレースの大きな特徴でもあるのだが、ハーフのランナーはスタート後、近隣の公園を周回して、再びスタート地点に戻ってくるというコース設定がされているわけである。ちょうど僕が走りはじめた頃に、公園を1週してきた先頭のランナーと先導車が後ろからやってきて、さーっと追い抜いていくわけである。もちろん先導車にはテレビカメラもあり、ばっちり先頭ランナーと、その横にいる僕をとらえるわけである。あーなんかすいませんねみたいな気分になる。


 そして、本来なら最初に公園を周回するコースなのだが、先頭のランナーに誘導されるように走ってしまったので、僕の走った距離は正規よりも公園周回分少ないことになる。言っておくが悪気はなかった。周回することはちゃんと頭に入っていたが、一旦大きな流れの中に組み込まれてしまうと、そこからはみ出すのは、とてもむずかしいのである。「あれ? 俺、一緒についてきたらいかんよな」と気づきはしても、今さら逆戻りするわけにもいかず(ただでさえ遅れているのだ)、そのまま先頭集団と一緒に走っていってしまった。だから序盤は、まわりのランナーは皆次元の違うスピードで、高速道に迷い込んだ原チャリのような気分で走ることになった。


 とかなんとか、ぐだぐだとはじまったわけだが、結局19キロ地点で足切りという結果に終わった。21.0975キロメートルの序盤に数百メートルほど少なく、さらには最後は2キロほど手前で終了。結局自分が何キロ走ったのかもよくわからないという結果である。当然記録もないので、走ってる距離が少ないことを書いても問題ないかなということで、堂々と書いてみた。


 ちなみに、この日のゲストランナーは、4年間箱根をわかせた東洋大OBの柏原竜二だったが、チラリとも見ることなく終了。本当にあの柏原君が来ていたのだという実感すらまったくない。


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 ひとことでまとめると、1から10まで、すべてにおいて緊張がなかったということだろうか。まじめにやらないと、ろくでもないことばかり起こる。一夜漬けでやった気になったのが、そもそもいけなかったようにも思う。ただ、ひとつだけプラス面があったとすれば、それは走っていることが別段苦ではなかったということ。何にも縛られてなかったからだろう。このリラックスした気分というものを上手に応用できないもんだろうか。この課題を得たことが収穫のような気がする。