僕が住んでみた町@中野2(2006~2008年)

 空き巣の話。


 たしか2008年の正月だったと思います。中野の家に空き巣が入りました。


 年末、金沢に帰省し、1月6日(この年は土日も絡んで年始の休みが長かった)の夜22時頃、正月の帰省から中野に戻り、そのまま何もせずベッドで眠りました。そして次の朝、よく晴れていたので颯爽とカーテンを開けてみると、ガラスがざっくりと割れているのです。不思議なもので、最初はカーテンを引いた弾みで自分が割ってしまったと思ったくらいです。しかし、何の音もしなかったし、何の感触もなかった、ということは元々割れていたのか――じゃあいつから割れていたんだ? きのうは家に居ない、その前も居ない、あ、正月だ、正月の帰省の時期……、これはもしかして留守の時期のアパートを狙った空き巣かもしれない……、やや、よく見るとガラスが割れているというかノブの部分を狙って割られている、ん? ノブが開いている、誰か入ってきたのか? と、事実を把握し、推測するまでに非常にまどろっこしい時間がかかるものなのです。とはいえ、出勤時間も迫っていたので、プレステとパソコンが獲られていないことだけ確認して、そのまま家を出て会社に行きました。警察に電話しようという発想は起こりませんでした。気になるけど、とりあえず時間だし会社行こうと。知らない誰かが自分の家に忍び込んでいるという事実を目の当たりにしてさえも、人間の日常行動を変えることはできないわけです。


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 もちろん会社に着いてからは警察に電話したのですが、この日は新年初日の出勤ということもあって、仕事後は新年会のようなものがあり、お巡りさんには深夜の24時前後に家に来てもらうことにしました。その間、家の窓は割れっぱなしです。そして、酒を飲んで帰ってきて、酔っ払ったまま夜中に鑑識に立ち会いました。何も知らない人が見たら、僕が酔っ払って悪いことをしたように思えたでしょう。僕は終始まったく危機感はないし、非常にのんびりした対応をしてました。おそらく空き巣に入られたのも昨日今日ではないだろう。年末くらいに忍び込まれて、その後1週間ほどガラスが割られた状態のまま何も獲られていないわけだから、今さら1分1秒を争うようなことはないと考えていたのだと思います。


 結果、部屋には足跡もなく、どうやら空き巣はガラスを壊して中に入るか入らないかで退散してしまったようです。もしかしたら、忍び込もうとしたときにどこかから偶然大きな物音でもしたのかもしれません。しかし、割られたガラスの破片も部屋の中には一切落ちてなく、外の少し離れた場所に捨てられていることなどから、明らかに狙って侵入しようとした誰かがいたということだけははっきりしていました。


 で、その後、ガラスの修理に対してまずは自腹で修理し、あとから保険会社に申請し同額を受け取るという流れだったのですが、手続きが非常にめんどう、かつ複雑で、結局その書類は提出しませんでした。保険というものは、こういう風に「なんかめんどうだから、や~めた」という部分で支出を抑えられている部分もあるはずです。


 その後も僕は普通に何の居心地の悪さもなく空き巣の入った部屋で生活をしていました。「1度忍び込もうとして失敗してるくらいだから、もう2度とここには来ないだろう」と考えていたので、防犯グッズを買い揃えたり、セキュリティ対策を施したりするようなことはありませんでした。というのも、この頃はもうすでに、妹もほとんど家にはおらず自分1人だったからでしょう。自分以外の家族がいたりすれば、もっとナーバスになっていたはずですが、独り身だと「たぶん大丈夫」で済ましてしまいます。つまり、安全というものは、自分に対してよりも他人に望むものなのです。だから、家庭でも職場でも、自分とまわりの人間との繋がりが強固なコミュニティほど、そこは安らげる場ということになるのだと思います。