ながら映画いくつかの感想

 結局、jitakuTVという、日本のテレビ番組を観ることができるサービスを利用している。その中で、映画専門チャンネルというのがあり、民放のゴールデン・タイムではなかなか観ることのできない、マイナーだったり、R指定のあるような映画を視聴することができる。コマーシャルこそあれど、放送時間に縛られてはいないので、無駄なカット・シーンなどもないのが良い。まあともかく、そんな専門チャンネルなどで観た映画などの感想を軽く紹介。

「さよなら渓谷」

 2013年公開。主演は真木よう子大森南朋


 前半1/4くらいは観逃してしまったが、暗~い雰囲気、世界観に興味をそそられ、最後まで観てしまった。あらすじとしては、かつてレイプ事件を起こした犯人グループとその被害女性を、記者である大森南朋が追うといったもの。はっきりとした時代設定は明らかになっていないが、昭和を感じる田舎が舞台となっており、この閉塞感漂う息苦しさも観処のひとつだった。


 原作が吉田修一ということもあって、小説も読んでみたくなり、直後にiBooksで書籍を探すも見つからず、キンドルでも同じく取り扱いなし。2008年刊行の作品だが、電子版はリリースされていないようだ。残念である。海外で暮らすとなると、電子書籍しか買いたくない。電子書籍化を求む。


◆映画「さよなら渓谷」公式サイト

「空気人形」

 2009年公開。監督は是枝裕和。原作は漫画らしい。で、迷ったがiBooksで販売していた原作『ゴーダ哲学堂 空気人形』を買ってみた。いわゆる下手絵のオムニバス短編で、ヴィレッジ・ヴァンガードなどに置いてそうな作風。漫画ではたった20ページで終わってしまっていたので、このストーリーを元に2時間の映画に仕上げたという荒業のようだ。


 あらすじは、空気人形、つまりはダッチ・ワイフがある日突然「心」を持ってしまい、普通の人間のように生活しはじめるというファンタジーもの。原作がそうであるように、漫画っぽい下地の上に、映画ならではの哲学、風刺が散りばめられており、考えさせられる部分が多かった。


 主演は、ペ・ドゥナという韓国の女優さんなのだが、これがまた人形のようなキュートさで魅了されてしまう。ペ・ドゥナ目当てだけでも観る価値はあるのではないかと思う(ダッチ・ワイフ役なのでヌードもあるよ)。

リンダリンダリンダ

 2005年公開。ペ・ドゥナ繋がりで放送されていたので観た。主演は、香椎由宇前田亜季。タイトルは、当然、ブルー・ハーツの名曲からのオマージュで、学園祭でのライブをすることになった、とある女子高生バンドの物語。


 公開当時、個人的に興味はあったのが、ヴォーカル担当がよくわからない外人だったため、なんとなく見送ったという記憶がある。ところが、今となってその「よくわからない外人」目的で観ることになったというのも、これまた時間がつくりだすパラドックスだ。


 いわゆる青春ものなので、深く考えさせられることや、心を打たれるような教訓めいたシーンはほぼない。ただひとつ、うむと思った点を挙げるとすれば、こういった、演奏シーンもほぼない、なんちゃってバンドであっても、ベーシストにはプロを起用するんだなということ(Base Ball Bearのベースが担当)。


◆「リンダリンダリンダ」OFFCIAL WEBSITE

キサラギ

 2005年公開。観るのは2度目だが、それでも楽しめた。主演は、小栗旬ユースケ・サンタマリア小出恵介塚地武雅香川照之


 自殺した売れないB級アイドルの一周忌追悼会に集まったファン5人によるオフ会から、「彼女は本当に自殺したのか?」という推理合戦に展開する物語。舞台用の脚本、演出のようで、とある小部屋のみで話が完結するのもある意味新鮮である。特に、非常に巧みに練りこまれた脚本が秀逸で、キャラ設定はもちろん、セリフや小道具に至るまで一切無駄がないのが見事。また、当時僕は、小栗旬のことを、なんとなくチャラチャラしたいけ好かない奴と思っていたが、この映画を観て、その印象が、きれいさっぱり消え去ったこと覚えている。

バンクーバーの朝日

 2014年公開。主演は、妻夫木聡亀梨和也


 1914年~41年、戦前のカナダにて活躍した日系移民の野球チームバンクーバー朝日」がモデルとなっている実話。ちなみに同チームは、2003年にカナダ野球殿堂入りを果たしたそうだ。野球が題材となっているので、公開当時も気にはなっていたが、観ることなく、香港行きの飛行機の中で観ることになった。実話をベースにしているためか、物語的には、さほどドラマティックではなかった(というか、大方予想通りの展開)。


 ただ、そんな中、異国地で暮らすマイノリティ民族の話という部分に、妙に心を惹かれてしまったのは確かである。いまでこそは、世界でも「日本」「日本製」「日本人」といったブランド力はあるのかもしれないが、ジャップが差別の対象であった時代の閉塞感に、心が痛くなった。


 また、現地のカナダ人と共に働く主人公達の若い世代と、言葉も覚えず、現地人に歩み寄ろうともせずに文句ばかり言うというその親の世代が、日本人同士でぶつかり合うシーンがあった。「英語もろくに覚えようとしない、いつも日本人ばかりとしか関わってない、そんな人に何がわかるんだ!」みたいな。異国の地で暮らす人間として、このセリフには、重い教訓のようなものを感じた。正直、飛行機の中でゴウゴウと雑音がひどく、細かな内容も掴めない中で観たのだが、このシーンだけでもはっきり観ることができたのは、良かったと思っている。


◆映画『バンクーバーの朝日』公式サイト