マクドナルドの楽しみ方

 平日の昼にマクドナルドに行って、そこが禁煙フロアにも関わらず、男ばかりが居たらむんと異様さを感じる。


 フロアの手前の方の席には、若いサラリーマン風のメガネの男がコートを脱がず新聞を広げており、その隣ではパソコンを一心不乱に打ち込んでいる私服の男がいた。僕は彼らの横を通り過ぎ、奥の方の窓際の席につく。


 僕の目の前では、50代くらいの背広を着た2人組みが、身振り手振りを交えてひたすら会社の話をしていた。テーブルの上にはもう何も置いてなく、長時間話し込んでいるように思える。起業がどうとか、社長がどうとか、投資がどうとか話をしていたが、どちらもさほどキレる風貌ではなかったし、そもそも2人の会話は噛み合ってないように聞こえた。お互い言いたいことを発言しているだけの際限なき一方通行。僕の真後ろには、30代中盤くらいのオタク風の3人組みが熱心に麻雀の話をしていた。「こんな風にテンパったとき、お前ならどうする?」とか、「テンパる」という単語の正しい使い方をしている場面にはじめて立ち会った。こういった人種にありがちな、得意分野の話はやけに声がでかいという会話だった。僕の右隣の方、観葉植物の影になってチラチラ見え隠れする位置には、60代ほどのじいさんが居眠りをしている。髪の毛は長く薄く、右耳の上から左耳の上に流れているスタイルだ。たまに何かの拍子に目を覚まして、少し左右を見まわしてまた目を閉じるというサイクルを繰り返していた。そのじいさんと一つ席を開けた隣には、数少ない女性客のうちの1人がおり、大学生であろう彼氏と人目をはばからずいちゃついている。そしてそのまた隣には、50代ほどの主婦が2人、ソフトクリームを舐めている。おばちゃん2人組みなのに口数が少なかった。


 僕は1人で、左側に見える外の景色を眺めながらハンバーガーを頬張り、ポテトをつまむ。そしてときおり、指についたポテトの塩を舐める。一応人目を気にして、あまり指は舐めないようにするが、指についたポテトの塩は案外おいしい。


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 僕はマックのこういう日中の空気が好きだったりする。社会の縮図のようで。いろんな人種が集まってきて、おのおのに自由なひとときを過ごす。これだけメジャーでそこかしこにあるお店だから、いろんな物語が集約され、濃さを感じる。モスやロッテリアでは、ここまでの多様性はないだろう。僕はときおり、国内最大手のハンバーガー・ショップにて、このような時間の楽しみ方をしている。