Subscribed unsubscribe Subscribe Subscribe

『三四郎』『それから』を漫画で読んで

 最近、自分の中で漱石ブームなので、前期三部作である『三四郎』と『それから』の漫画版ををiBooksにて購入。どうして漫画版を買ったかというと、オリジナルの小説では、おもしろさはもとより世界観すら把握できなかったから、漫画で全体像を掴んでやろうと思ったわけだ。


 まず『三四郎』に関して。ざっくりあらすじだけを言うと、新しくはじまる大学生活のために田舎から上京してくる主人公が、東京という大都市で多くの人間と出会い、揉まれ、そして不思議な女に恋してしまうというストーリー。青二才の上京物語といえる。僕が好きで一番食いつきそうなテーマだけど、これまで3~4回読み返すも、まったくおもしろみを見つけられずにいた。というのも、何事にも奥手で存在感の薄い主人公と、何を考えているかわからず捉えどころのない美禰子というヒロインがどうも好きになれなかったのが理由だと思う。もう主演の二人が僕にとってのストレイ・シープなのだ。


 次に『それから』。小説ではこの話の方がさっぱり印象がない。略奪愛をするもバッド・エンドというくらいの内容しか覚えていなかった。でも改めて漫画で全体像を掴んでみると、これまた非常に深い。特に主人公の特定の女に恋をし、結婚しない理由(言い訳?)が鋭い。初期の村上春樹のような主人公のデタッチメントが物語の主となっていると感じた。漫画を読んでみて、どちらかというと『それから』の方を再度読みなおしてみたくなった。


 この二作品を漫画を読んでみて感じた事が、漱石って下手な女流作家よりもずっとディテールにロマンチックなエッセンスを忍ばせているんだなということ。恋をした人間が持つ葛藤や、恋ができない人間が感じる憂いを非常に繊細で耽美に表現している。それが100年前の切り出し方であっても色褪せていない。まあ、自由恋愛が一般的ではない「時代」というものを僕が知らなかったせいで、小説では理解できなかった部分が大きくあったのだろう。やはり時代、常識が大きく違う物語は、注釈や「絵」がないと吸収しきれない。前期三部作のもう一作品『門』も読んでみたいのだが、漫画版はないようだ、残念。



「迷える子(ストレイ・シープ)ーーわかって?」
東京の大学に入学するため、熊本から上京した小川三四郎。彼にとって東京は、見るもの聞くもののすべてが新鮮な驚きに満ちていた。やがて三四郎は、都会育ちの美しい女性・里見美禰子に強く惹かれていく。だが美禰子は「迷える子(ストレイ・シープ)」という言葉を三四郎に幾度となく投げかけ、曖昧な態度を続けるのみであった…。
『それから』『門』へと続く夏目漱石・前期三部作の第一編。



僕はどうしても結婚しなければいけないんですか?
明治時代後期、新興ブルジョアである長井家の次男・代助は大学を卒業後、親の援助のもとで定職にも就かず、数ある縁談話も断り独身生活を守り続けていた。 愛に対しては淡泊な代助だったが、友人夫婦との再会で、己の中の真実の愛に気づいてゆく……。
近代社会の孤独な人間心理を描く夏目漱石前期三部作のひとつを漫画化!

夏目 漱石(1967~1916)
帝国大学英文科卒業後、松山中学校などを経て、イギリスへ留学。帰国後、東大講師を務めながら作品を発表。朝日新聞社入社後は本格的に職業作家としての道を歩み始めるが、晩年は胃潰瘍と糖尿病に悩まされ、「明暗」で絶筆となった。その他の作品に「坊っちゃん」「夢十夜」等。