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ストレイ・シープ2016

note

 何でも今年2016年は、夏目漱石没後100年の年なんだとか。命日でもある12月9日のテレビ番組で知った。最近の話だ。


 とはいえ、漱石に対して僕はそこまで読み込んだわけでもなく、中学生などの読書感想文の雄『吾輩は猫である』『坊ちゃん』は読んだことすらない。『こころ』にはいたく感銘を受けたが、『三四郎』も『それから』もいまいち読み込めなかったし、『門』『行人』『彼岸過迄』『坑夫』『夢十夜』等々の代表作も、一度手に取ったはいいが最後まで読み切れず、途中で放り投げた次第。そもそも明治の作家なので、時代はもとより「日本語」にも違和感があり、読解力のない自分にはすんなり馴染めなかったのだと思う。ということもあってか、僕の中での漱石は教科書で習っただけの文豪でしかなかった。同じ教科書に出てくる作家としては、太宰治の方が好きだったし、実際若いころはダザイにかぶれていた時期もあったのは確か。ところが、30代も中盤になった頃からは、どういうわけか夏目漱石という文豪に魅力を感じるようになった。おそらくその最初のきっかけというのは、「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話だったと思う。明治の文豪とかいうガチガチにお堅い人間かと思ったけど、なんかお洒落だなと。次には、『三四郎』にて、「ストレイ・シープ」という奇妙なワードが心に引っかかったことを覚えている。こちらは、先ほどとは逆の翻訳で、「迷子」の英訳としての言葉。物語全体として当時たいしておもしろいと感じなかったのだが、このヘンテコな言葉だけは頭に残っていた。迷える羊、ストレイ・シープ。


 漱石没後100年の今年は、漱石にスポットを当てたドラマやテレビ番組を見ながらこの2つの翻訳を、よくよく思い浮かべた。


◆「今年の漢字」は「金」


 ということで、毎年恒例、僕の僕による僕のための今年の漢字は「羊」。ストレイ・シープな1年だったと思う。非常に迷える1年だった。とはいえ「迷」というほど混乱してたわけでもないので、「羊」がちょうどいいかなと。


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 そんなこんなで最近は漱石に再注目している。とりあえず『三四郎』と『それから』を漫画で読んでみたが、非常におもしろかった。さすがは心理描写の神。鬱(神経衰弱)の先駆者。漱石の生きた100年前の激動の明治維新は、昨今のグローバル化とも似ている。来年2017年は、漱石生誕150周年らしいので、もう一度読み切れなかった漱石作品を読んでみようかと思っている。迷いを払って、則天去私の境地に至るように。