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綾辻行人著『十角館の殺人』を読んで

 かなり有名な作品らしく、「ミステリー」「推理」というジャンルで、よくレコメンドされるので、昔から名前は知っている。が、なんとなく古い作品だったので、読まずに放置していたけど、いい加減そろそろと、軽い気持ちでiBooksから購入。


 あらすじは、閉ざされた空間で順番に人が殺されていくという、今となっては“よくある”ミステリー。しかし、この作品が、この手の舞台設定の“はしり”らしい。発表は1987年で、この作品の後では、「綾辻以降」という言葉が使われるようになったほどなのだとか。それだけのインパントがあったということだ。だから、「ミステリー」だけではなく、「おすすめの本」というざっくりしたお題の中でも、『十角館の殺人』の名前を誰かが必ず挙げてくる。


 ただ、正直僕の中では、少し物足りなかった。理由は単純で、「綾辻以降」の作品をいくつか読むなかで、当然、この作品をオマージュとしてアレンジされた小説に出逢っているからだ。そういった“盛られた”作品を読んだのちに、元祖を読むと、非常に“あっさり”に感じるのは無理もない話だと思う。僕は、当たり前のように、オチがあと二転三転すると思ってしまったくらいだ。この作品の真の価値は、誰もやってないことを最初にやったというこであって、当時、誰もやってないことを最初に体験した読者にしかわからない。


 音楽でも、自分の好きなアーティストが影響を受けたという、10年くらい前の名前だけはよく聞くバンドを掘り起こして聴いてみることがあるが、いまいちピンとこなかったりする。「これのどこが良かったんだろう?」と。この理由も、そういうのは、もう今では誰でもやってるから、たいして感動できないのだ。ゲームでも、僕はドラクエ・シリーズで一番好きな作品は、迷わずドラクエ3なのだが、ボスを倒したあとに裏世界があり、シリーズを通したストーリーが繋がるといった展開は、今となっては特にめずらしくもないシナリオなため、少なくとも今の若い人には、僕と同じ「ドラクエ3」の価値は共有できないと思っている。当時の常識の中で体験したからこそ、おもしろかったのだ。


 ということで、よくよくミステリーを読むが『十角館の殺人』は未読という人は、改めて手に取る必要はないかと思う。逆にミステリーをあまり読んでない人や毛嫌いしてた人は、まずはここからはじめるのが良いのではないだろうか。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
綾辻行人(アヤツジユキト)
1960年京都府生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院修了。’87年に『十角館の殺人』で作家デビュー、“新本格ムーヴメント”の嚆矢となる。’92年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。『水車館の殺人』『びっくり館の殺人』など、“館シリーズ”と呼ばれる一連の長編は現代本格ミステリを牽引する人気シリーズとなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)