伊坂幸太郎著『ゴールデンスランバー』を読んで

 地上波だったかで映画版が放送されていたのを後半1/3くらい観て、続きではなく、前半が気になったので小説を読もうと思った。また大分前にも、小説がとてもおもしろいとの評判を耳にしたが、当時は文庫化されてなかったので見送った覚えがある。が、このたびめでたく文庫よりさらに手軽なiBooksにてダウンロードし、iPhoneの中でちまちま読み進めた。


 ケネディ大統領暗殺とその犯人オズワルトという歴史的事実をベースとしつつ、ビートルズの楽曲をタイトルとして冠しているためか、どこかフィクションとは思えないリアリティがあった。まあ伊坂作品なので安定のクオリティ。とてもおもしろかった。


 で、どうしてもケネディ大統領の暗殺について気になったので簡単に調べてみた。ケネディ大統領の暗殺に関する記述などペプシ・コーラから湧き出る泡の数ほどあるのだが、調べているうちに、ケネディマリリン・モンローの不倫にまで話が広がっていった。一説によると、この不倫によって、アメリカ政府の機密事項や政治的な裏話が、一市民とも言えるモンローに漏れてしまっていると噂されたらしい。また当時のモンローは、僕等が想像するようなトップ・スターの地位でスカートをひるがえしていたわけではなく、いわゆる落ち目に差し掛かっており、精神的にかなり不安定だった。となると、政府関係者にすれば、影響力のあるモンローがいつ爆弾発言をしてもおかしくない、非常にやっかいな存在として目に映るわけだ。やがて不倫関係を終わらそうとするケネディに対し、未練を露わにするモンローというナーバスな状態になり、CIAが動かざるを得ない状況になったと。そして、公にはマリリン・モンロー睡眠薬の過剰摂取で自殺したとなっているが、実際にはCIAが暗殺し、工作したのではないかという仮説がある。その後、ケネディ大統領が暗殺されたのは周知の通りで、実はケネディ弟もモンローと不倫関係にあったため、同じように暗殺されたと。この3人は歴史的事実としては不可解なまま死んでおり、不可解なまま放ったらかしにされている部分が多い。これは不倫という形で漏れてはいけない情報が漏れてしまったことへの、口封じであると考えることもできる。まあつまりは、何かの都合によって、人は殺されるし、殺したと疑われることは、想像以上に特別な出来事ではないと言えなくもないわけだ。殺すまでいかなくとも、世の中のすべての事柄は、誰かの都合によって動かされているのだ


 僕がこの作品に強く惹かれたのは、不可解なリアリティを感じたからかな。こういうのって、あり得る話だと。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ?何が起こっているんだ?俺はやっていないー。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
伊坂幸太郎(イサカコウタロウ)
1971(昭和46)年千葉県生れ。’95(平成7)年東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。’02年刊行の『ラッシュライフ』が各紙誌で絶賛される。’03年『重力ピエロ』、’04年『チルドレン』、’05年『グラスホッパー』、’06年『死神の精度』、『砂漠』が直木賞候補に。’04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞受賞。洒脱なユーモアと緻密な構成で読む者を唸らせ、近年稀にみる資質の持ち主として注目を浴びている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)