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子供に苦労をさせたくないなら

 先に紹介した井端の本の中で触れられていた話題。「自分の子供をプロ野球選手にしたいか?」という質問に対して、井端は、自分がプロ野球選手になるにあたって苦労したことや犠牲にしたことを考えると、そんなしんどい思いを子供にさせたくないといったような意見を述べていた。もちろん最終的には本人の意志次第だとしつつも、プロ野球選手になんてなって欲しいとは言えないと。それを読んで、芸能人やタレントなんかでも、自分の子供は自分と同じ仕事に就いてほしくないと答えている人を何人か思い出した。そのときも、たいていが同じように「自分と同じような苦労はしてほしくない」という理由だった。


 確かにな、と思うところはある。自分の場合は、今の仕事をなんとなく上手いことやってこれた(やってこれている)けど、もっと他にもっと楽でおもしろいことはあるだろうと。でもまあ、極論を言うと、何をやっても楽なことなどないだろうし、単なるサラリーマンだって、楽ではないしおもしろくもない。自営やフリーランスの人も同じだろう。お金を稼ぐのにおもしろいことなど、何一つないと僕は思っている。


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 そんなことを考えていたら、少しひねくれたことが思い浮かんでしまった。じゃあ、子供が苦労せずにやり甲斐のあることを見つけるために、親ができることってなんだろう。――どう考えても、できることなんてない。というか、どうしたって生きていくのには、やっかいなことばかりだ。人間として生きていくには尋常じゃないくらいタフにならなければいけない。だったら、そもそも「人間」として、生んであげないことが「子供」にとっての一番の幸せなのではないか、と思ったわけだ。


 毎日毎日、誰かの下世話な話題に相槌うたないといけないし、興味もない流行りに合わせて愛想笑いしなきゃいけない。誰が決めたのかわからないレベルの低いルールを守らないといけないし、テレビをつければ暗いニュースと下品な笑い声が聞こえてくるだけだ。24時間ろくでもない人間が理不尽な要求を押し付けてくるし、日々知らない間に搾取されることで毎日が過ぎていく。そんな世の中で生きていく意味ってあるのかなと思えてしまう。どんな仕事をするか、何に興味を持つか以前に、この世の中自体「しんどい」ことなわけだ。


 もちろん、余計なお世話なんだろうけどね。子供だって、生まれてきてこの世の中に放り出されれば勝手に楽しんで生きていくだけだ。でも「こんな苦労をさせたくない」と言うなら、「人間」として生んであげないことが一番なんじゃないのかなと思ってしまった。