ついでなので草野球について

 ついでなので草野球について。


 東京に居た時分、ふと思い立って草野球をはじめた。2004年。もともと半年に2~3回くらい、不定期だが長い付き合いの友人同士で集まったときには、3人で決まって公園に出かけキャッチボールをしていた。そのキャッチボール用として、ケン・グリフィーJr.モデルのグローブを買ったくらいだ。まあ当時はそれだけで充分だったわけだが、あるとき、いくつかの偶然が重なって、居ても立ってもいられないくらい草野球がしたくなったわけである。


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 まず当時僕は新聞の折り込みチラシをつくる仕事をしていた。といっても、営業所オリジナルのチラシなので、朝日新聞社読売新聞社と仕事をしていたわけではない。あくまで西武池袋線沿線の一営業所との仕事である。で、その月一の折り込み紙の中で「私達が新聞を配達しています」みたいな、営業所の配達員を紹介するコーナーがあった。「私が2丁目を配っています! 趣味は映画鑑賞です。よろしく!」みたいな。ということで、スタッフさんには順番に簡単なインタビューをしていたわけだ。


 で、今回紹介するスタッフさんと話をしていたときのことである。この手のインタビューでは、たいてい序盤に「ところでご出身はどちらですか?」みたいなことを訊く。まあ、東京にいると、初対面の人に対しては、必ずこの質問で場を繋ぐ。するとおっさんは「私は石川県です」と言う。そして星稜高校のOBでもあった。僕の高校は星稜の隣にあったこともあって、ローカルな話題で意気投合することは難しくなかった。で、お決まりの質問だが「趣味は何ですか?」と訊くと「野球が好きで草野球をやっとるんですよ」と照れながら答えてくれた。年齢は50歳くらいだっただろうか。メガネをかけて、白髪が目立ったが髪はまだ元気に生えており、大柄ではないがたしかに体格もがっちりしていた。1番サードでもやってそうな風格だ。「こんな歳なんでたいしたことはできませんが、毎週金曜の朝にグランドを借りて野球をしておるんですよ。対戦相手も含めそれぞれのチームで10~11人くらい集まりますね。そう、だから所長さんにもお願いして毎週金曜は決まってお休みをもらっています」と笑う。早朝野球ってやつだ。僕は当然のごとく非常に羨ましく思う。


 だから、僕も実は野球が好きなんですよと言わざるを得ない。でも実際は友達をキャッチボールをするくらいなんですよ、と言うと、おっさんは「チームなんていくらでもあるから探してはじめればいい。ワシらのような年齢でも野球を楽しているんだから、アンタみたいに若ければ、もっと楽しいだろう」と、新入団選手を激励するオーナーのような貫禄でアドバイスをくれた。


 僕は、もう草野球がしたくてたまらなくなり、その夜、Googleの検索窓に「草野球 募集」「草野球 小平」といったワードを入力し、たしか2つのチーム宛に参加してみたいという旨のメールを送っていた。時期は4月中旬。


 そう、いろんな条件が一気に重なったわけだ。偶然にも出逢った同郷の人間から草野球を薦めらたタイミングがプロ野球が開幕した直後で、生活の中に「野球」が色鮮やかに芽吹いた頃だったと。ましてやその年、僕が最大級にリスペクトする落合博満氏がドラゴンズの監督に就任していた。もう野球をはじめるしか選択肢がないような状況だったわけだ。


 こうして僕の草野球生活がはじまる。今でもこの「きっかけ」の一連の流れを鮮明に思い出せるくらいだ。