日本記録とアジア記録と日本国内の小さなこだわり

 東京ヤクルト・スワローズのバレンティン選手がシーズン本塁打記録を塗り替えましたね。良いニュースですが、ひとつ気になっていたことを書いておきます。まあこの件に関しての、日本人だとか外国人だとか言う問題に関しては、これまでも散々出尽くしているので割愛。そんなことよりも僕が違和感を持っていたのは、もっと日本人的な視野の狭さと言いましょうか、島国的な発想に関してです。


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 まず、これまでのアジア野球界でのホームラン記録は2003年、韓国時代のイ・スンヨプが打った56本。まず、この点において、日本の記録はアジアで2番目であったことがもっと認知され、そして劣等感を感じるべきだったんじゃないのかなと思っています(まあ、このアジア記録もバレンティンがあっさり更新したのですが)。日本人が誇る「55本」なんて、アジアで2番手の数字だったんですよ。日本国内でのその記録保持者が日本人だとか外国人だとか、そんな部分にこだわっているから、日本は世界で置いてけぼりを食らうわけです。韓国に追い抜かれるわけです。


 ちなみに前回、年間55本記録が取り沙汰されたのは、2001年のローズ、2002年のカブレラ。つまり日本国内で「外国人助っ人に日本の記録を塗り替えられてたまるか!」みたいな空気で、2年連続潰し合いをしてたその翌年2003年にアジア記録が韓国から生まれたわけです。あー、日本だなぁ、と思ってしまいますね。そして、この事実が取り上げられること自体あまりなかった。日本国内でどうこう、外国人であることが是か非かみたいな話ばかりなのです。


 そして世界でのシーズン本塁打記録は2001年のバリー・ボンズが叩きだした73本。そしてこの数字は、かの有名な注釈付きの記録で、薬物疑惑があるための参考記録として扱われることもある釈然としないタイトルです。こんなしょうもない記録は日本野球界から更新してしまえばいい、という声はもっと挙がっても良いと思います。そのときの記録更新者は別に誰だって構わないでしょう。日本人でも外国人でも韓国人でも、スポーツをする上でのルールを守ったクリーンな人間なら。大事なのは「日本」という環境下で、その記録を生みだすということ。そうじゃないと、優秀な人材は海外に流れていきますからね。


 ともかく「55本」という聖域は過去のものとなってしまったわけですが、「55」という数字は、スラッガーを象徴するものとして引き継がれているし、これからも引き継がれていくでしょう。ひとつの数字が持つ浪漫として。