映画「終戦のエンペラー」を観て

 上映前のから気になっていた映画ですが、ずるずると今日まで放置していました。休みが取れたので「まだやってるかな?」と調べてみると、金沢の映画館はどこも今日6日が最終日。滑り込みで観ることができました。そして一言感想としては、観て良かったなと。ただ、ここで紹介したところで、もう上映が終わっている所がほとんどだと思いますけどね。


 簡単に内容を説明すると、太平洋戦争の責任が昭和天皇にあるのか否かを、アメリカ軍がリサーチするといったストーリー。ただ、「つーか、天皇ってナンダヨ?」って部分に躓きながらも、天皇、そして日本人というものを掘り下げていくといった部分が一番の観処になると思います。ちなみに「天皇」が存在しているのは世界で日本が唯一だとか。製作はアメリカなので基本英語、日本語字幕での作品です。


 ちなみに僕は思想的に右でも左でもないし、そもそも天皇に関しての知識はほとんどないです。まあもっと端的に言えば皇室に対しての興味も関心もないです。ただ、実家に行くとばあちゃんの部屋には今の陛下、皇后の写真がちょこんと飾ってあったりします。昔は昭和天皇の写真でした。僕が天皇と聞いて思い浮かべるのは、この「ばあちゃんの部屋に写真が飾ってある人」というイメージで、それ以上でもそれ以下でもないと言ってもいいくらいです。ニュースでの皇室関連の話題も別段興味がありません。ただ、戦争を体験したというか、あの時代を生きた人にとっての天皇というのは、はやり特別なのだと思います。何がどう特別なのかはわかりませんが、僕らの感覚とは違うというのは最近わかってきました。


 映画の中で考えさせられたシーンと印象に残ったセリフを紹介します。この映画に限ったことではないでしょうが、終戦直後、焼け野原になった東京を描いた絵を観ると、震災後の東北を連想してしまうものがあります(もちろん両方共リアルで観たわけではないのですが)。しかし呑気で何事においても危機感を感じない僕は、「なんだ、この状況から日本という国を立て直せたなら、今回の震災だってなんとかできるでしょ」なんて思ってしまいます。戦争を知らない世代代表の僕は、どうも太平洋戦争で大きな被害を受けたのは広島だけみたいなイメージがあり、「え? 東京もこんなひどいのかよ!」なんて思ってしまうのです。だから、こんなどこかしこも壊滅的な状態から這い上がっての今があるなら、我々日本人にできないことなんてないだろうと思えてしょうがないのです。まあ、這い上がるのも再建するのも、今の僕らの世代次第なのでしょうが、少なくとも今の僕にはそのガッツはないですがね……。そして、作中後半に、日本人がアメリカ兵に対し、「日本人は無私の民だ」と説明するシーンがありました。素敵な言葉だなと思いました。規律を重んじ、団結力で戦う民。しっかり覚えときなさい、アメリカの方、とドヤ顔したくなるような気分になったわけです。しかし、映画館を出て、家に帰ってきて改めて考えてみると、「無私」というワードを瞬間的にポジティブに捉えること自体、僕が日本人であるこの上ない証拠なんだろうなと思いました。おそらく、世界を見渡せば「無私」をマイナス要素として考える人間が多いような気がしました。自分を無くしてしまったら生きている意味なんてないだろうと。だから、このセリフは確信犯的に設定されたセリフなんでしょうね。日本とアメリカで捉えられる印象が180度違うといったキーワードとして。「無私の民」。


 最後に、ヒロイン役の初音映莉子さんという女優さんがとても魅力的でした。調べてみると「ノルウェイの森」でハツミさん役で出演してたみたいですね。僕はまったく知らなかったのですが、有名なのですかね。もっと注目されても良いと思います。


◆映画『終戦のエンペラー』公式サイト