高校野球観戦-金沢桜丘高校対星稜高校

 降水確率70%の天気予報を覆し、雨どころか、燦々と太陽が輝く天候となりました。7月23日、この日はベスト4を決める準々決勝。「打倒私立」を掲げる桜丘にとって、これ以上にない格好の相手、星稜高校との対戦をむかえる日です。


 平日にも関わらず観客は多く、僕はバックネット裏から観戦することにしました。両軍のベンチが見えるという理由からです。ところで、ここ数年甲子園出場できていないとはいえ、やっぱり星稜のユニフォームというのは威圧感がありますね。石川県民としてあのクリーム色と青には特別な感情があります。グランド整備をしている控え選手ですら畏敬の念を持って眺めてしまいます。


 午前10時丁度に試合がはじまりました。立ち上がり、星稜ピッチャーは球数も多く、野手のエラーもあり、どうも浮き足立ってる感じがしました。これはいけるんじゃないかとさえ思えてきます。そして2回表、やっぱり持ってる、前試合で場外弾を放った背番号14の2年生が、左中間に、いわゆる「打った瞬間」の特大ホームラン。しかし、終始押し気味で試合を進めているのですが、序盤の得点はこの1点だけ。あと一本が出ないというよりも、星稜側が「得点さえやらなきゃいいんだろ」と要所をおさえているといった印象でした。その後、3回と4回に星稜が得点。あっさり逆転されるのですが、それでもまだ付け入る隙は充分にありそうな雰囲気でした。


 そして問題の6回になります。


 桜は下位打線でランナーを貯め、キャプテンのタイムリーで同点に追いつき、なおも一、三塁と逆転のチャンス。しかしエキサイトするスタンドとは裏腹に、僕はここで同点のまま終わると厭だなという気持ちの方が強くありました。というのも、表攻撃でかつ格上チームを相手にする場合、負けてる展開から同転に追いつくだけでは、まだまだ不利な立場にあると言えるからです。むしろ同点に追いついたことで、相手の闘争本能に火をつけ、一気に逆転され、気合を決められることすら往々にしてあります。1点でもいいからリードを奪って、相手を焦らせる立場にまで持っていかないと意味が無いのです。しかし結局同点止まり。そしてこの不安は的中し、直後の6回裏に一挙4失点。観戦していて、さすが星稜と思ったのは、この6回裏の一瞬だけでした。勝ち方を知っているというか、「ここだろ」って局面だけ一気に爆発する怖さを感じました。はっきり覚えてませんが、死球、スクイズを挟んでの5連打だったかと思います。これを受けて、6回まで10安打していた桜攻撃陣も、その後3イニングはノーヒット。充分過ぎるダメージでした。


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 ところで、「野球は筋書きのないドラマ」などと言うことがありますが、この試合を観て、この文句は嘘だなと確信しました。もともと僕はこういった形だけの言葉は好きじゃないのですが、もう二度と使わないでしょうね。野球(まあスポーツ全般でしょうけど)は、筋書きのあるドラマであって、僕らはその筋書き通りにことが運ぶことにこそ、感動を覚えるのです。たとえば、3点差で負けているゲームで9回裏、そのチームを応援してるファンであれば、誰もが逆転満塁サヨナラホームランをイメージし、期待するでしょう。で、実際に逆転満塁ホームランが出ると、期待通りの展開が起こったことに喜びが爆発するのです。でも、なぜか「野球は筋書きのないドラマです!」などと言うのです。いやいや筋書きはできていたでしょう、みんなの頭の中に。当たることは少ないかもしれないけど「筋書き」は、しかとあっただろうにと。WBCのときだって、井端の同点タイムリーをみんなイメージしてて、それがそのまま起こっただけのことです。


 この試合、もう誰もが(僕でさえ)星稜が勝つなと思っている最終回。2アウトになって、バッターボックスにむかうのは、背番号1。ここまで名実ともに桜の看板となり、そして僕を球場に通わせることとなった選手が、4点ビハインドでもう後のないの場面での登場です。彼は、何を思って、何を背負って右バッターボックスに立ったのか。4点差があっても「ここから繋いでいくぞ」「まだまだ、これからだ」と強気だったのか、「もう充分やった」と安堵の気持ちだったのか、「やっぱり私立強豪の壁は、高かった」と諦めがあったのか。もちろんそんなことは僕にはわからないし、彼の口から本当のことが語られるのは卒業してから何年かした後のことになるでしょう。いずれにしても、やっぱり、こういうめぐり逢わせになるんだよなと思ってしまいます。そして結果は、多くの人が「こうなって終わるだろう」という予想通り、懇親のストレートに、空振り三振。筋書き通りの、美しき終焉。石川の高校野球における私学という壁はあまりにも大きすぎますね。しかし(他人であるからなんでしょうが)僕は、負けてしまったけれども、妙に納得できた部分は大きいです。


 来年も高校野球観に行くのかなぁ、なんて考えてしまいますが、桜の14番の2年生もおもしろい存在だし、双子でレギュラー出場していた選手もまだ2年生のようです。星稜の背番号1も2年生だし、この日4安打の1年生好打者もいます。また遊学館にも2年の大型生左腕がいると聞きます。また僕の同級生が公立校で監督をやっているので、この学校にも注目しています。高校野球って、甲子園よりも、こういった地方予選の方がおもしろいって意味がわかってきましたね。時間を見つけて、また球場に行くような気がします。これらすべての選手が活躍する、筋書き通りのドラマが今から楽しみです。


◆朝日新聞デジタル:高校野球「星稜、集中欠かさず桜丘下す 石川大会」 - 石川ニュース