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多崎つくる中

 もう、かれこれ半年ぶりくらいになるだろうか、まともに本を読むというのも……。先日発売された、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を仕事の休憩中にコツコツ読み進めているわけだ。まだ半分くらいしか読んでないのだが、最近の春樹作品にはめずらしく、(あくまでここまでは)リアリズムに徹していて、突拍子もないキャラクターや展開にはなっていない。そして主人公が今の僕と同年代であり、また高校から大学進学、上京という人生のなかでも最初に訪れる大きな変貌の時期を軸の一つにした話なので非常に関心を持てている。発売前のコメントにも出てきた『ノルウェイの森』とバックボーンが似ている気がする。作品のトーンや色合いではなく、バックボーン。ハルキ作品は、こういったハタチ前後の人間達を描いたものが一番好きである、個人的には。


 まあともかく、久しぶりに創作物の世界に浸ったせいか変な夢も見るようになった。洪水が起きて逃げるという、あまり有り難くない夢なのだが、やけにリアリティがあったし、目が覚めた瞬間「ああ、今読んでる小説の影響かな」と思い浮かんだくらいだ。脳が何かしらの刺激を受けているんだろう。洪水の夢なのだが、悪くないと思った。たしか逃げ延びたところで夢が終ったし、目覚めたあとも幸いにしておねしょはしていなかった。悪くない。


 まあとにかく、『1Q84』と比べると、ここまでは非常にのめり込んでいる。「これはどういった世界の話なのだろう?」といったような、ふわふわした落ち着きのなさを感じない。地に足の着いた、しっかりと踏ん張りの効いた世界観である。ハルキ作品の中では、短い話の部類になるため正直あまり期待していなかったのだが、良い作品だと思うので、迷っている人は是非買って読んでみてくだされ。