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風邪のネツ、口内炎、名前

 僕は小さい頃、そもそもが喘息持ちで、それが発端なのかよく風邪をひいたり体調を崩したりしていた。小学校の後半に野球をはじめるまでは、食後には必ず薬を飲み、それでもしょっちゅう寝込んでいたわけである。で、風邪をひくと、口の中に腫れ物みたいのができることがよくあった。まあいわゆる口内炎のことなのだが、家ではそれを「風邪のネツ」と呼んでおり、風邪が治りかけると「風邪のネツ」が出ると言っていた。「よし、風邪のネツが出たなら、もう治るな」などと、どちらかと言えばポジティブな捉え方をしていたのであった。ので、真偽のほどはともかく、この「風邪のネツ」は、それとなく「良いもの」として捉えて育った。「風邪のネツ」ができれば、もう風邪も治るのだと。


 で、やがて大人になり、20代の中盤くらいで「風邪のネツ」と呼ばれるものが、家だけの超ローカル用語であり、一般的には「口内炎」と呼ばれていることを知る。どちらが先か覚えてないが、そのあたりから「風邪のネツ」が痛みや苦痛を伴うものだと感じるようにもなった。つまり、「風邪のネツ」という平和的なネーミングが、僕の中で「口内炎」という負の名称に変わったことで、その捉え方も変わってしまったわけだ。こいつはやっかいな代物だと。


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 物事には、名前がついた時点で意味が生まれる、というように、意味合いが変われば名前も変わっていくのかもしれない。口内炎を「風邪のネツ」と呼んで、ご利益があるようにさえ崇めていた子どもの頃をうらやましく思うことが最近多い。