中田永一『吉祥寺の朝日奈くん』を読んで

 吉祥寺の書店で偶然見かけたので、買ってみました。もちろん、著者の中田永一乙一であることも知ってのことで。


 この作品の著者は乙一ではないので、こんなことを言うのも的はずれかもしれませんが、乙一の最大の特徴として、物語にセックスの要素が皆無であるということが挙げられるでしょう。それが意図したものか、そうでないかは別としても、セックス抜きにこれだけのクオリティの物語を生み出し続けるスタンスに感銘を受けます。そして、今作はより一層「刹那さ」に磨きがかかり、期待通りの満足感を得られました。


 表題の「吉祥寺の朝比奈くん」はもちろんですが、僕がこの本を購入することを決めたのは、1作品目の「交換日記をはじめました!」を数ページ立ち読みしてのことです。刹那さあふれる中田永一ワールド、全編通して読んでみて欲しいです。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
彼女の名前は、上から読んでも下から読んでも、山田真野。吉祥寺の喫茶店に勤める細身で美人の彼女に会いたくて、僕はその店に通い詰めていた。とあるきっかけで仲良くなることに成功したものの、彼女には何か背景がありそうだ…。愛の永続性を祈る心情の瑞々しさが胸を打つ表題作など、せつない五つの恋愛模様を収録。

【目次】(「BOOK」データベースより)
交換日記をはじめました!/ラクガキをめぐる冒険/三角形はこわさないでおく/うるさいおなか/吉祥寺の朝日奈くん

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
中田永一(ナカタエイイチ)
2005年、恋愛小説アンソロジー『I LOVE YOU』に参加、収録された「百瀬、こっちを向いて。」が傑作と評判に。08年、同タイトルで単行本デビューを果たすや、各誌で年間ベストテン入りする。11年、『吉祥寺の朝日奈くん』が映画化される(いずれも祥伝社刊)。また同年、初の長編『くちびるに歌を』が出版され、翌年小学館児童出版文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)