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第36回金沢百万石ロードレースの続き

 レースの話の続き。19キロ地点で足切りになったときの出来事。


 19キロ地点の少し前から、あの辺が関門地点だなというのは、なんとなく見えていたが、その先を走っているランナーも多数見受けられた。だから、まだぎりぎり制限時間に間に合うのかな、などと思いながら走っていたが、それらしきポイントに来ると、係のおじちゃんと係の高校生が待ってましたとばかりに、しかし幾分気まずそうな表情でどっとコースを塞ぐように飛び出してくるわけだ。そして、ランナーたちのゼッケンをもぎ取りはじめる。お互い、なるべく目を合わさないようにしながら。そして、ゼッケンを取られたランナーは、その時点でただの「町の人」となる。つまり、走っているという行為だけで、右折しようとしている車を止めたり、車線の一つを使わせてもらったりできないというわけだ。係のおっさんは「こっからは、走ってもいいし、走らなくてもいいです。ただし、車道には出ずに歩道を走ってくださいね」と。


 で、僕はというと、ゴール地点(すなわちスタート地点でもあるのだが)まで歩いて向かうことにしたのだが、何人かのランナーはゼッケンを外すや否や、また駆け出すわけである。つまり大会としての記録は残らないが、自分の手元の時計でハーフのタイムを計測しておきたいということだろう。否、もしくは記録なんてもののためではなく、意地として最後まで走りたいと思った人の方が多いかもしれない。そもそもあと2キロ程度なのだ。15分もかからない。僕が遠くから見ていた、関門の先を走っていた人というのも、おそらくゼッケンはないが、自主的に走ることを選択した人たちなんだろう。ちなみに僕のすぐうしろにいたランナーが「何分くらい足りませんでした?」と係の高校生に訊いており「1分くらいです」との返答があったことを聞いた。まあ気を使っての答えだろう。実際は3分以内くらいのタイムアウトなんだと思っている。


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 まあ時間のことはともかく、強く考えさせられたのは、この「はい、失格です」と言われた後も走り続ける姿勢というもの。もし、僕が本気でこのハーフにチャレンジし、持てる力を振り絞っても関門に間に合わなかったとき、それでも尚、走り続けるガッツとか泥臭さというものを持ち合わせていただろうか。むしろ、本気で挑んでいた場合ほど、この屈辱感は大きく、ともかく走り切りたいという新たなゴール(大会という規模の大きなゴールから、自己という規模の小さなゴールへの切り替え)に向かうことができなかったように思う。


 でも、実際問題は、所詮アマチュアの市民ランナーとして、妙な建前や大会ルールなんかじゃなく、最後まで走り切ることにこそ意味があるはずである。僕も実際最後の関門をクリアできたとしたら、足りない周回分も走ってから手元の時計を止めようと思っていた。だから、たとえルール上、ゼッケンを没収されたとしても、最後までハーフの距離を走り切るという信念を貫けるだけの強さが必要だったなと反省している。『風が強く吹いている』でも、再三登場した、ランナーに必要なものは速さではなく、強さだということ。練習不足でも、実力不足でもいいから、強さを身につけなければいけない。