東京エトセトラ@占い2

これまでのあらすじ
僕と女友達とで、占いに行って嘘をついている話。


 その後、会話が止まると、言葉が続きませんでした。実際、ノリだけのアイデアだったので、何を質問するかなどの細かいことまで考えてはいなかったからです。つまり、占い師に嘘をつくという目的はもうすでに達成されており、僕らの方から具体的に占ってほしいことなどないのです。ここからは、すべてアドリブになります。


 するとニセ妹は「家族のことを占ってほしいです」と言いました。「どんなことかな?」と占い師。「下の妹がぐれてます」とニセの妹。おっと、ここで新しい兄妹が増えました。まあ、実際には三姉妹の三女のことを言ってるんだろうなと僕は察しがついたので、話を合わせることにします。「下の妹が今年東京に出てきたのですが、大学にも行かずバイトばかりしているんです」と僕。「あら、三兄妹なのね」と占い師。「はい」とニセ妹。うん、今そういうことにしました、と僕の心の中。「三人は今一緒に暮らしているの?」。これがなかなか難しい質問でした。僕は本当の妹とは一緒に暮らしています。だから僕は一緒にいますと答えた方が、その後も適当に話は進めやすいのです。しかし、三姉妹の方は、長女と三女は一緒に暮らしていましたが、今隣にいる次女は一人暮らし。だから、ニセ妹からしてみれば、別々に暮らしていますの方が、次の嘘がつきやすくなります。ので、僕は言い出しっぺに主導権を取らせようと黙ってることにしました。するとニセ妹は、普通にこう答えました。「下の妹は上のお姉ちゃんと一緒に住んでます」。「あれれ? 4人兄妹なのね!?」と、口にしたカレーが予想以上に辛かったように驚く占い師。話が大きくなってきたな、と僕は少し焦りはじめます。しかも、先ほどニセ妹は僕らが三兄妹であることを認めており、すでに話が矛盾してきています。しかし、僕とニセ妹が国分寺に一緒に暮らしていて(実際の僕のケースをモデルとする)、長女と三女が別の場所で一緒にいる(実際の三姉妹のケースをモデルとする)ことを説明し、なんとか話をそれっぽくしました。


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 占い師はうやむやしくテーブルの上にタロット・カードを並べ、三女の生年月日や性格なんかを質問してきます。この辺は、モデルがいるので、なんとでも答えられます(僕は詳しく知りませんが)。そしても僕らのことも訊きながら、もったいぶるような手つきで、さらにカードを並べていきます。占い師は、ふむふむと言って、何かが舞い降りてきたような表情で言いました。「お兄さんと、3人の姉妹とで……どうも波長が合わないようね。ここで一つ線が引かれているようです」と言って、テーブルの上のカード1枚と3枚を右と左に離して置きました。「今4人の兄妹が、2つに分かれて2人ずつ暮らしていますが、実はお兄さん1人と3人の妹さん、この組み合わせの方がバランスが取れるかもしれません。ごめんなさいね、お兄さん。でもこれ、ホントのことなの」と占い師。あたってますよ、すごいですね、と僕の心の中。「あたし引っ越した方がいいのかな」とニセ妹。「いいえ、そこまでしなくて結構です。電話やメールなど、これまでよりも少し多めに連絡をするだけで充分ですよ。これで4兄妹の関係は良くなって、下の妹さんもお兄さんやお姉さんがたの言うことを聞いてくれるようになります」。この辺が「占い」というものの巧みなところで、核心部分はずばっと大きく見せるが、客のアクション部分は話が大きくならない程度の汎用的なアドバイスにとどめているわけです。何事においてもコミュニケーションを取りすぎて失敗するなんてことはありえないのですからね。


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 と、なんだかんだと書いてきましたが、ネタが尽きてきたのでこの辺でやめます。つまり、この一連の話はほとんど嘘です。


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 ハモニカ横丁で占い部屋を見つけたところまでは本当の話。しかしそこには先客がおり、20分ほど外で待ってくれと言われたのです。しかしこんなところで待つには寒過ぎたので、占いは諦め、居酒屋さんに行ったのです。実際には嘘をついての占いなどしてもらっていません。ただ、こうだったらおもしろかったのにな、という可能性の話を書いてみたかっただけです。そういう思い出です。