北原みのり著『毒婦。』を読んで

 木嶋佳苗死刑囚に関する裁判の傍聴記録です。


 木嶋佳苗って誰だよと思った人は、デブでブスな女が、結婚詐欺的な手口で男を騙して大金を奪い、練炭自殺に見せかけて殺してしまった事件と言えば思い出すでしょう。「なぜよりによってこの女に……」という部分で僕も気になった事件ではありました。


 とはいえ「デブ」「ブス」という言葉がひとり歩きし、実際に本人がどんな容姿だったかは、すっかり忘れてしまったまま、この話を読み進めていました。「デブ&ドブス」と言えども、男をたぶらかすだけの女なので、この本の中ではそれなりに魅力のある女として描かれているわけです。それが本当のことなのか、執筆上の表現テクニックなのかはわかりませんが、どうしても文章に引っ張られ、それなりに魅力のある女性像が僕の中でできあがっていくのは自然なことだったと思います。


 で、読み終わったあと、「で、実際どんな奴だったっけ?」と思い、被告の名前を検索してみると、「あれっ!? ここまでブサイクだっっけ?」と二度見するくらい驚いてしまいました。やはりこの事件の腑に落ちない部分は、イメージとリアルの果てしないギャップなのでしょう。


 ただ筆者によれば、こういう思考(容姿にばかり目がいってしまうこと)は男独特のもので、女はまた別の見方をするとか。その辺の捉え方の違いも含め興味深く読むことができました。


 少し残念なのは、被告本人の人物像をもっと掘り下げて欲しかったかなという部分。まあ「傍聴記録」と謳っているのでしょうがないのですが、結局、この人が根っから腐ってることはわかったが、芯に近いところに、何が眠っているのかはわからず、消化不良として残ったままでした。まあ、どんな事件でもすっきり割り切れるものなどないのですがね。


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【内容情報】(「BOOK」データベースより)
“ブス”をあざける男たち。佳苗は、そんな男たちを嘲笑うように利用した。「週刊朝日」で話題沸騰の著者、渾身のレポート。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 100日裁判スタート(やばい。私、振り回されてる/だまされた男たち ほか)/第2章 佳苗が語る男たち(「名器」自慢に法廷内パニック!/本命の男たち ほか)/第3章 佳苗の足跡をたずねて(初めての罪/母との葛藤 ほか)/第4章 毒婦(判決/毒婦。)

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
北原みのり(キタハラミノリ)
1970年、神奈川県生まれ。コラムニストで、女性のセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)