僕が通った学校@バンタンJカレッジ1(2002年)

 バンドを辞めて、広告代理店を辞めて、「バンタンJカレッジ」という就職専門学校に通うことにしました。2002年の4月のことです。「広告の仕事に携わってきて、雑誌編集の勉強を本気でやってみようと思うようになりました」。広告代理店を辞めるときのウソの言い訳です。バンド・スタジオで働いていたときの先輩が考えてくれた文句ですが、あながちウソでもないなと思い、本当に編集の勉強をするために専門学校に入ることにしました。ウソから出たなんとかというやつです。


 学校は、渋谷の桜ヶ丘にありました。渋谷といっても、若者が集うエリアとは正反対に位置してたので、非常に静かな場所に、ポツンとあったのを覚えています(しかし、僕らが卒業した直後くらいに学校の場所はどこか別の所に移転した)。僕は、「雑誌編集総合コースA」「ライター養成総合コースA」という2つのコースを受講することにしました。


 雑誌編集総合コースAは、月曜日と木曜日の夜19時から2時間の授業。ライター養成総合コースAは、土曜日の朝8時から4時間の授業。それぞれ週に4時間、計8時間の授業を9月までの半年間行うというカリキュラムです。僕はそれ以外はバイトもせず、ひたすら図書館で本や雑誌や新聞を読みながら、学校の課題を仕上げるといった大作家先生のような生活をし、やがて6月からはじまった日韓W杯にエキサイトする毎日を送っていました。受講費は50万円くらいだったか、よく覚えてないけど、それくらいだったはずです。やはり、どうやって工面したかは忘れました。


 仕事をしながらでも、転職先にPRするためのスキルを身につけられるといったスタンスの授業だったと思います。生徒は、二十歳を少し超えたくらいの若い人が多く、大学卒業したけど就職浪人したとか、就職して1~2年経つけど、もう嫌気がさして転職したいという人がほとんど。当時24歳の僕は最年長くらいでした。


 そしてこういったスクール自体、女の方が身軽なためなのか、もしくは「編集」「ライティング」というジャンルのためなのかは知りませんが、ほとんどが女性でした。「雑誌~」の方は、20人くらいの受講生の中男は僕1人で、「ライター~」の方も15人くらいの中男は4人ほどです。女ばかりのところに男1人だとさぞかしハーレムだなと貴方は思うかもしれません。しかし実際は、女ばかりという連帯意識(それが上辺だけのものであれ)といものは磁石のように強固なもので、たった1人しかいない男は異分子として、そもそも「無いもの」として扱われてしまうのです。そして僕も自分から誰かに話しかけるタイプでもないので、教室の隅でムスッとしてる変な奴と思われていたのでしょう。


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 雑誌編集総合コースAの先生は、ユニコーン奥田民生と瓜二つで、本人もそう意識しているのか、非常に面倒くさそうに喋り、しかし1秒でも早く授業を終わらせて帰りたそうにそわそわしてる先生でした。2時間の講習のため、休憩時間もあってないようなもんなので、たいしてクラスメイトと仲良くなったという手応えもなく、半年の講習が終わったら、大きめの中華包丁でキュウリでも叩き斬るように彼女らとの繋がりも途絶えました。


 カリキュラムの後半、フリーペーパーを作成するというので、5つくらいのチームに別れ、班ごとに編集会議を行うわけですが、女同士でやいのやいのアイデアを出し、ずいずいと企画を立て、「ところで男性の意見はどうですか?」などと僕に意見を求めるようなことなどなく、どんどん進んでいきました(逆バージョンの「女性の意見はどうかね?」というのは、非常によく耳にするフレーズですが)。しかし、この辺が女らしい部分かもしれませんが、ふとしたできた時間に「あの子とは気が合わない」という女子特有の愚痴みたいなものが多方面から僕に一点集約され、非常にめんどくさかった思い出ならあります。


 他の班が、「表参道カフェ特集」とか「憧れの女性アーティスト特集」とか、女性誌っぽい切り口でテーマを決めるなか、僕らのチームは、どういうわけか「教育」というお固い題目を取り上げ、ゆとり教育の是非みたいな特集を組むことになりました。もしかしたら、男の僕が居たことで「渋谷スイーツめぐり」みたいな切り口を遠慮して避けてくれたのかもしれませんが。


 非常に暑い夏のさなかに、取材がはじまりました。まずは井の頭公園で子ども連れの親子へのインタビューです。今いくつの習い事をしているのか、将来の夢は何か、という集計を取るためです。炎天下の街頭インタビューで学んだことは、以下の2つ。

  • 女性は、おそらくナンパなどで免疫があるせいか、他人から声を掛けられても無視して立ち去ることに躊躇がないが、男性はそうでもないので父親に話しかける方が相手してくれる確率が高い
  • 木陰などに立っている人は「忙しいので」とか「人を待っているので」とか適当な(ウソの)言い訳して容易に立ち去ることができるが、ベンチなどに座っている人は逃げようがないので(嫌々でも)インタビューに答えてくれる確率が高い


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 お次に三鷹にあるNPONPOという言葉もこのときはじめて知った)法人の塾にも取材に行きました。塾の先生に「教育とは?」みたいな質問をぶつけ、ジャーナリストになったような気分で、取材をしたことを覚えています。どういう経緯でこの塾にアポを取ったのか知りませんが、非常に興味深い話が聞けたことを覚えています。


 何でもポイポイ処分してしまう僕ですが、このときのフリーペーパーは今でも持っていました。今読み返すと、さすがに学生のお遊びみたいなものですが、それでも週4時間ごときの授業で、しかもたいして仲良くもなく、よく知りもしないチーム・メイトとの作業のなかで、よくやったなと思います。