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僕が働いた場所@ハンバーガー・ショップ2(1997~1998年)

note tokyo

 サトウさんとうめきちの話。


 秋口くらいに、以前もこの系列のハンバーガー・ショップで働いていたという2つくらい年上のサトウさんというアルバイトが入ってきた(復帰したという言い方のほうが正しいかもしれない)。サトウさんは昔バスケをやっていたらしく、ひょろっと背が高かった。しかし筋肉らしきものは特に見当たらず、痩せ型の長身タイプで、同じように髪もさらっと長くバイト中は後ろで縛っていることが多かった。たしか東京出身の人で、一見チャラい見てくれだったのだが、僕とサトウさんの2人だけのシフトのことが多かったので自然と仲良くなった。そしてサトウさんはよく彼女を連れてきており、夜の客も誰もいない時間などは、3人でただお喋りをしているという時間がけっこうあったように思う。サトウさんの彼女は、普通にきれいな人だった。どこかの上品な家で、小さい頃からピアノを習っていそうな雰囲気だった。しかし、こんな時間に彼氏のバイト先に出てきてるくらいだから、どこかで1人暮らしをしているのだろう。そしてサトウさんの彼女は僕のことを「うめきち」と呼んでいた。「じゅんいち」を「うめきち」と聞き間違えて、どうやらそれが気に入ったらしい。通学路の帰り道にいるどこかの家の飼い犬のことを呼ぶように「うめきち、うめきち」と言っては、1人でけたけた笑っていた。だからもしかしたら、見かけほど品のある家の娘ではなかったのかもしれない。


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 サトウさんと僕は、よく「賄いオリジナル・バーガー制作コンテスト」をやっていた。賄いとして既成のハンバーガーを普通につくって食べるのではなく、自分なりにアレンジして、オリジナルのメニューを考えだそうぜというような遊びである。もちろん、僕ら2人が秘密裏でやっていたことで、2人でいろいろつくったハンバーガーをサトウさんの彼女に食べてもらって優劣を決めたりなんかしていた。もちろん、来客があれば、制作は急遽中止して通常業務に戻らなければいけないので、独創的な発想力に加え、柔軟な対応力も必要になる。


 今でもたまにそのハンバーガーを食べることがあるが、食べる度に、サトウさんとつくったオリジナル・バーガーの方が数段美味しかったなと思い出される。俺たちならもっと美味しくできるのになと。しかし、それはいつ客が来るかわからない、もしかしたら急に店長が顔を出すかもしれないというスリルの中での味だったからかもしれない。お金では買えない何とかというやつなんだろう。