ニコルソン・ベイカー著『中二階』感想

 なんともかんとも不思議な小説だった。主人公の頭の中で思い描いている事柄すべてを文章に書き起したというような内容。でもそれはとてもリアルに描写されており、ああ、確かに自分の頭の中でも、オフィスを歩きながら、誰かと話しながらもこんなこと考えてるわと改めて気づかされた部分がある。


 とてもおもしろい内容だし、とてもユニークな切り口だと思うのだが、何となく読み疲れてきて途中で断念(そもそも、本文よりも注釈の方が俄然長かったりするわけだ。結果、読み物としてどう読み進めて良いのか迷ってしまうし、注釈を読み終わったあと何ページも遡って改めて本文を読み進めるという行為に、もちろん新鮮味はあったのだが最後まで慣れなかった)。いちいちいちいち話が脇道にそれ、脱線し、どうでもいいことをネチネチといつまでも考えあぐねた結果、そもそもさっきまで何を考えていたのか見失うというというストーリーが読み物としては、とてもイライラする。ただ、イメージとして、「世にも奇妙な物語」の“おもしろ物語”としては見応えのありそうなシナリオかと思った。


中二階 白水Uブックス 【新書】

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価格:998円(税込、送料別)

中二階のオフィスに戻る途中のサラリーマンがめぐらす超ミクロ的考察。靴紐はなぜ左右同時期に切れるのか、なぜミシン目の発明者を讃える日がないのか…。誰も書かなかった、前代未聞の注付き小説。再刊。
〈ベイカー〉1957年生まれ。ニューヨーク州で育ちイーストマン音楽学校とハヴァフォード大学で学ぶ。著書に「もしもし」「フェルマータ」がある。